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Yesterday's Children – Yesterday's Children (1970)

 Yesterday's Childrenは1960年代の中ごろにコネチカット州で結成されたグループで、彼らの初期のシングル「To Be Or Not To Be」は当時の荒々しいガレージ・シーンを見渡しても特にヘヴィな出来だった。唯一のLPとなった本作を出す頃にはその音楽性にますますの拍車がかかり、現在ではハード・ロックひいてはメタル・ミュージックのひな形の一つとして高く再評価されている。
 とはいえアルバム『Yesterday's Children』は、他にもロックにおける様々なサブ・ジャンルをカバーしている。「She's Easy」の耳をつんざくようなReggie Wrightのギター・ソロの後に突然やってくる静寂と転調は、多くのプログレ・バンドが好んだやり方だ。「Evil Woman」はSpooky Toothのバージョンを模範としているが、ストナー・ロックに通ずるずっしりとした音の質感は、本家にだってひけをとっていない。
 意外な選曲もあって、「What Of I」はボストンのロック・バンドWilkinson Tri-Cycleが前年に発表したナンバー。複雑な展開だったこの曲を、本作ではいくらかストレートなアレンジでカバーしている。「Paranoia」のとげとげしいイントロは、現代のガレージ・バンドでもお手本にするに十分値するし、「Providence Bummer」はシンプルな造りのブルースながらも、UKのブルースとはまた違うアメリカらしい骨太な仕上がりになっている。
 いくらか時代を先取りしすぎたYesterday's Childrenのサウンドは、現在パスト&プレゼントといったレーベルが作る多くのコンピ盤に採用されている。轟音を愛する者なら、有無を言わず聴くべき一枚といえるだろう。