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Gene Simmons – Jumpin' Gene Simmons (1964)

 Kissの強面ベーシストChaim Witzがその名にあやかったことでも知られるロカビリー・シンガーGene Simmonsは、1950年代の終わりごろに地元メンフィスでレコーディング・キャリアをスタートさせた。名門レーベルであるサンでこそ芽は出なかったものの、64年にハイ・レーベルから出した「Haunted House」がチャートの上位に食い込んでいる。このヒットはSimmonsだけでなく、サンの後進レーベルだったハイにとっても勢いに大きな拍車をつける成功となった。
 「Haunted House」は、Elvis Presleyのバンドで活躍したBill Blackのグルーヴィーなベース・ラインをフィーチャーしている。Simmonsが揚々と歌い上げる歌詞の中にはおかしさと哀愁が同居しており、やはり本作の中でも抜きんでた一曲だといえる。Brian SetzerやJohn Fogertyといった多くのロック・スターたちが、何十年も後にこの曲をカバーした。
 ロックのスタンダードでは「Boney Maronie」や「Slippin' And Slidin'」などを取り上げており、オルガンやサックスがSimmonsの耳なじみのよいボーカルに彩りを添えているのだが、いずれの演奏も2分半にも満たずに終わってしまうのが実に惜しい。
 Simmonsは「Hotel Happiness」や「Just A Little Bit」のようなブルースもこなし、The Carlislesがヒットさせたカントリー「No Help Wanted」を、気持ちのいいソウルに解釈している。「Haunted House」を期待して聴くロカビリー・ファンが大半だろうが、本作は実にバラエティに富んだアルバムである。