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Louis Armstrong – Ambassador Satch (1956)

 1954年にコロムビア・レーベルに移籍したSatchmoは、プロデューサーGeorge Avakianの見事な手腕によって名作と呼ばれるレコードを連発していく。この『Ambassador Satch』はその中の一枚で、前年に行われたヨーロッパのライブ・ツアーの熱狂を閉じ込めている。
 「Royal Garden Blues」はSatchmoの恩師であるKing Oliverにゆかりのあるダンスホールのテーマ曲だ。ここでのトランペットとEdmond Hallのクラリネット、そしてTrummy Youngのトロンボーンとの掛け合いは、ジャズ史に残る名高い演奏として光を放っている。有名な「Twelfth Street Rag」などは早いテンポでプレイする者も多いが、本作のゆったりした曲調の中で印象的なのはむしろ観客の朗らかな笑い声で、実際のステージがどんな様子だったのかを思わず想像してみたくなる。
 味わい深いのはHot Five時代の名曲「West End Blues」だろう。Billy Kyleのピアノのいぶし銀のような魅力やスキャット・ボーカルの暖かみにはため息が出る。Satchmoのコミカルなセリフで始まる「Tiger Rag」もまた最高にホットだ。Barrett Deemsの爆弾のようなドラムはアルバムのラストを飾るにふさわしい。
 一聴して気づくことなど絶対にないだろうが、実は収録曲のうち2つはスタジオの録音に歓声をオーバーダブしたものが使われている。だが本作がSatchmoの音楽的絶頂期を証明するものであることは疑いようのない事実であり、実際彼はアルバムのタイトル通り、後に東側を含む世界中の国にジャズ文化を広める〈大使〉の役割を負うようになった。