Walter Bishop, Jr. – Keeper Of My Soul (1973)
1940年代のNYにおけるビバップ・シーンから活躍してきたWalter Bishop, Jr.は、ドラッグで50年代のキャリアの多くをフイにしてしまったが、61年のアルバム『Speak Low』でピアノ・トリオの永遠の金字塔を打ち立てたことで、ジャズの歴史にハッキリと名を刻む存在となった。西海岸に拠点を移してからは作曲理論に没頭し、黒人主導の新興レーベルだった〈ブラック・ジャズ〉からその研究の成果となるアルバムを発表している。
〈4th Cycle〉なるバンドを率いて録音したこの『Keeper Of My Soul』だが、そのサウンドはエレクトリック楽器をふんだんに駆使した重厚なブラックネスに彩られている。これには公民権運動を芸術面で推進しようとした同レーベルの作風が強く表れており、前述の『Speak Low』からの変貌ぶりという意味でも充分驚嘆に値するだろう。
アルバムはメロウな導入の「Soul Village」から始まる。ここでBishopは電子ピアノを用いてRonnie LawsのサックスやWoody Murrayのヴィブラフォンを交えたインタープレイを繰り広げ、土着的でフリーな雰囲気に満ちた「N'Dugu's Prayer」や「Those Who Chant」では、ビバップの文脈から脱却した力強いピアノのタッチとスピリチュアルな高揚感を結び付けている。
スタンダード曲の特異なアレンジも聴きどころのひとつだ。完全なファンクに仕上がっている「Summertime」は換骨奪胎ぶりがすさまじいが、「Blue Bossa」は原曲の魅力だったボサノヴァの質感を保ちながら鳥肌もののスピーディーなソロを聴かせている。