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The Gary Moore Band – Grinding Stone (1973)

 あの男くさいシャウトとギターの印象はまだ鳴りを潜めてはいるが、Gary Mooreが自身の名前を冠するバンド名義で発表した『Grinding Stone』には、彼の豊かなセンスがジャムの形で発揮されている。
 Skid Rowを脱退したMooreは、リズム隊のJohn CurtisとPearse Kellyを中心にThe Gary Moore Bandを結成した。インストゥルメンタルを中心とした長尺な音楽の展開には、当時の流行だったプログレッシブなジャム・ロックの演奏の影響が見てとれる。タイトで複雑なリズムで押し進み、ドラマティックなエンディングを迎える「Grinding Stone」はその典型だ。サイケデリックな様相をいっそう強めたアンサンブルの「Spirit」は、Jan Schelhaasのオルガンをフィーチャーしてサウンドが広がりを見せている。
 だが、ともすれば90年代のMooreにも迫るくらいのブルース・フィーリングがかいま見えるのも本作のうま味のひとつだ。「Time To Heal」はサザン・ロックのような骨太な演奏で、Mooreの歌声にも力強さが満ちている。「Boogie My Way Back Home」のイントロで聴かれるドブロ・ギターの渋い味わいは、本作の隠れたハイライトのひとつといえるかもしれない。
 The Gary Moore Bandは本作の発表後すぐに解散し、Mooreはご存じThin Lizzyのサポート・メンバーとして迎えられた。一般的に彼の初ソロ・アルバムとして知られるのは、Thin Lizzyでの活躍を経て発表された『Back On The Streets』なのだが、『Grinding Stone』はときどき聴き返したくなる作品である。