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Bread – On The Waters (1970)

 1970年、名うてのソングライター集団Breadがブレイクするのはもはや時間の問題だった。固定のドラマーとしてMike Bottsを迎えたBreadは、大ヒット・シングル「Make It With You」をフィーチャーしたアルバム『On The Waters』で、後のAORへと続くポップ・ロック・シーンへ金字塔を打ち立てた。
 収録曲の多くがDavid Gatesの単独か、Jimmy GriffinとRobb Royerのコンビのペンによるものだ。彼らの生むメロディは、暖かみのあるフォーク・カントリーのテイストや、上質なアメリカン・ポップのサウンドによって磨き上げられ、CSNを思わせる洗練されたコーラス・ワークによって完成する。
 メロウな穏やかさを湛えた名曲「Make It With You」(全米1位を獲得した)がアルバム全体のイメージを決定づけているように見えるが、この曲が起伏の激しいロック・ナンバー「Why Do You Keep Me Waiting」と「Blue Satin Pillow」に挟まれていることからも分かる通り、本作は実にバラエティに富んでいる。「Been Too Long On The Road」では陽気なカントリーにほのかなサイケの味をブレンドし、一方で「Easy Love」のビートは実にグルーヴィーに仕上がっている。
 「Call On Me」は本作の中でも特にハードで重たいスタイルで、前述のCSNのサウンドにちょうどNeil Youngが奏でるストーンド・ギターを添えたかのようだ。ラストの「The Other Side Of Life」はGatesの哲学的な詞が印象的なバラードで、シンプルなアレンジも相まって最も成熟した歌といえるかもしれない。