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Les Sauterelles – View To Heaven (1968)

 スイスにおけるロック音楽の先駆けとなったビート・グループLes Sauterellesは、当初は当時流行していたR&Bナンバーにこだわっていたが、68年にはサイケデリックの要素を大いにミックスさせた『View To Heaven』を作り上げた。こうした音楽性の変遷にはイギリスのThe Beatlesの存在が大きく影響しており、特にコロンビア・レーベルから出た初期のシングル盤のアートワークなどは彼らの作品を強く意識したものだった。
 いずれの曲にも耳なじみのよいポップな雰囲気が満ち満ちている。バンドと創作の中心人物であるToni Vescoliのライティング・センスも大いに乗っていた時期で、バッハへの「Homage」やウエスタン調の「Hippie Soldier」をはじめとした、フォークにとどまらない旺盛で雑食なジャンル性はその表れだ。
 同時に、後年のガレージ・コンピの常連となる「Heavenly Club」と「Dream Machine」という2つのナンバーも生まれている。前者は透き通るコーラスが、後者はRolf Antenerの鋭いギター・ソロや、人を食ったように音楽が一時中断する曲の展開が印象的だ。
 「Silly Damsel」はサイケならではの激しく燃えるようなバンド・サウンドに、Silly Damselのクールなオルガンが加わっている。これはThe Zombiesのジャズっぽいセンスをどことなく思わせるものになっている。
 「Good New Times」にはディキシーランド風のジャズに、Vescoliの色気のあるボーカルが乗っている。バンド解散後のVescoliはBob Dylanの特徴的な歌唱スタイルをソロ・ワークに取り入れているが、「It's All Over Now, Baby Blue」のカバーはそれを予感させるような出来だ。