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Conte Candoli – Conte Candoli (1954)

 西海岸ジャズの名門ベツレヘム・レーベルは、音質やジャケットの意匠にはとことんこだわったが、レコードのタイトル・センスに関して言えばややドライなところがある。Stan Kenton楽団で活躍したトランぺッターによるこの2枚目のリーダー作『Conte Candoli』は特にそうで、再発のたびにコロコロと名前が変わってきた。『Powerhouse Trumpet』などという微妙な題名になったこともあれば、作中でも印象的なバップ・ナンバー「Toots Sweet」や「Groovin' Higher」の名を冠することもあった。
 確かに本作のベスト・トラックを決めるとなると議論が必要だ。「Full Count」はCandoliの高らかなソロと、クインテットの(特にテナーBill Holmanとの)息の合ったアンサンブルが最高にスインギーに決まっている。「I'm Getting Sentimental Over You」は、Lou Levyの巧みなピアノの導入からラテン風の転調、静謐なアウトロに至るまで、演奏全体が実に繊細に練り上げられているのが分かるだろう。彼らがよく顔を出していたLAのクラブ〈ジャズ・シティ〉の印象から生まれたという「Jazz City Blues」、そしてしっとりとしたバラード「My Old Flame」の落ち着いた雰囲気は本作の魅力をぐんと高めている。
 とはいえ、前述のタイトル・トラック2曲が群を抜いているのは確かだろう。レギュラー・コンボらしい隙のなさに圧倒される「Toots Sweet」、Dizzy Gillespieに挑戦するかのようにCandoliがブロウする「Groovin' Higher」の高揚感は、やはり甲乙つけがたいものがある。