Milt Jackson – Sunflower (1973)
『Sunflower』は、〈Brother Soul〉とあだ名されるほどブルージーな演奏に定評のあったMilt Jacksonのイメージを、根底から覆したアルバムである。フュージョン界のプレイヤー達が群雄割拠したCTIレーベルのカタログの中でも、本作は傑出した一枚だ。
それまではThe Modern Jazz Quartetのメンバーとしてバロック音楽や室内楽のスタイルをクロスオーバーしてきたJacksonだが、本作ではDon Sebeskyの抑制の効いたオーケストラをバックに、クールなサウンドを展開していく。1曲目の「For Someone I Love」はイントロのフラメンコ・ギター(Jay Berlinerによる)からして実に鮮烈だ。Billy Cobhamの技巧的なドラムを交えながら、JacksonのヴァイブとFreddie Hubbardのトランペット、そしてHerbie Hancockのピアノが絶妙な対比を生み出している。「What Are You Doing The Rest Of Your Life?」はMichel Legrandによる映画音楽をカバーしたもので、Jacksonの柔らかなプレイにSebeskyのサウンドが寄り添うように響き渡る名演だ。The Stylisticsのスマッシュ・ヒット「People Make The World Go Round」は、Ron Carterの太いベースによって印象的なジャズ・ファンクに仕上がっている。Hubbardのペンによる「Sunflower」は、自在なテンポの変化とともにアンサンブルの彩りも華麗に移りかわるプロフェッショナルな一曲だ。
CDの再発では「SKJ」というトラックが追加された。これはオリジナル盤の4曲とはうって変わってハード・バップに忠実な演奏が聴ける。