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Bob Dylan & The Band – Before The Flood (1974)

 前回の1966年以来実に8年ぶりに行われた、1974年のBob Dylan & The Bandによるアメリカ・ツアーを収録した本作は、まるで激しい未来を予感させるように『Before The Flood』と名付けられている。本来ならば直前に発売されたThe Bandとの『Planet Waves』からの曲を取り上げていてもおかしくないのだが、Dylanは自らの過去を清算するかのようにあえて60年代の曲を多くチョイスしている。
 まず興味を惹くのが、大規模なコンサート会場に向けに強力にアレンジされた「Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)」や「Lay, Lady, Lay」のようなナンバーだ。66年から依然として世界で最もやかましいバンドであり続けていたThe Bandのサウンドは、名ライブ盤『Rock Of Ages』にも並ぶ勢いがあり、「The Night They Drove Old Dixie Down」におけるLevon Helmの熱唱も素晴らしい。
 しかし、それと同じくらいにC面から始まるDylanの弾き語りの美しさが、本作に大きな価値を与えている。その中には初期の「Don't Think Twice, It's All Right」もあれば「Just Like A Woman」のアコースティック・アレンジも含まれていた。ラストの「Like A Rolling Stone」と「Blowin' In The Wind」のゆったりとしながらも力強い演奏、そしてオーディエンスのあたたかな歓声は、これ以上ないほどにドラマチックだ。
 『Planet Waves』と『Before The Flood』の成功は、Dylanが今一度自らのパーソナルな部分と向き合うだけの物質的な余裕をもたらした。Dylanの年表には、翌75年に『Blood On The Tracks』(恋愛の破綻を歌った彼の最高傑作)と伝説的なライブ・ツアーである〈ローリング・サンダー・レビュー〉という、まさに大嵐が控えているのである。