![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81206296/rectangle_large_type_2_1cdf0e9f099f777380c2ba737b0302d2.png?width=800)
Photo by
dr_kobaia
Family – It's Only A Movie (1973)
不世出のボーカリストRoger Chapmanの熱っぽい歌唱スタイルで知られるFamily。演奏メンバーの入れ替わりが激しいバンドだったとはいえ、名盤『Bandstand』のハードなサウンドを支えていたJohn WettonとPoli Palmerの脱退は誰の目にも痛手に映った。結果的に最終作となった『It's Only A Movie』は、カントリーやソウルといった様々なジャンルを折衷した、プログレへ回帰したような作風となっている。
Chapmanの歌声は「Boom Bang」でのはちきれんばかりのシャウトで最高潮を迎える。映画のサウンドトラックのように大げさなサウンドの「Buffet Tea For Two」、スロー・ブルースの「Banger」に続く「Sweet Desiree」や「Suspicion」のようなファンキーなロックも良い。新たに参加したTony Ashtonのキーボードを交えた「Check Out」のきらびやかなプレイは鳥肌ものだ。
映画の撮影現場をモチーフにした「It's Only A Movie」はオペラのような造りの歌で、いかにもな皮肉にあふれている。歌詞に登場する主人公トムは、西部劇スターのTom Mixを連想せずにはいられないが、実際に本作のアートワークで使用されているのは、William Farnumが主演した勧善懲悪もののサイレント映画のスチールだ。この前時代的なイメージは、終わりを迎えようとしていたバンドの結末をそのまま暗示しているかのようだ。