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The Paul Butterfield Blues Band – Keep On Moving (1969)

 シカゴのサウス・サイドからブルースの歴史を塗り替え、多くの白人のブルースマンのために道を切り拓いたPaul Butterfield Blues Bandだが、69年にはリーダーのButterfield以外のメンバーはすべて入れ替わっていた。まったく新しいブルースのサウンドを目指した本作は、新ギタリストとして当時20歳(!)のHoward "Buzzy" Feitenを迎え、同時にAACMの会員だったPhillip Wilsonの参加した最後のアルバムとなった。
 この時のメンバーの大部分は、ウッドストックのステージにも立っている。当時は若きDavid Sanbornも擁しており、後のジャズ・フュージョンの大物が多く在籍していたことになるが、本作はそこまでジャズに傾倒しきっていたわけでもない。全体的にはソウル・テイストにあふれた一枚だ。
 冒頭の「Love March」はウッドストックのステージで披露するには確かに最適なナンバーだった。しかし、今までのスタイルをかなぐり捨て、あまつさえフルートを披露までするButterfieldの姿に戸惑いを見せるファンがいたのも事実だ。とはいえ〈Blues Band〉の看板は生きており、「Losing Hand」ではまるでThe Memphis Hornsを味方につけたかのような重厚なソウル・ブルースが聴けるし、Feitenの不敵なギターが印象的な「Walking By Myself」は、この時代のメンバーでなければ味わえないアレンジになっている。
 「Where Did My Baby Go」はバンドの真骨頂であるハープと熱いギターの絡みがスリリングで、ベーシストRod Hicksの筆によるファンク「So Far So Good」の、これまたホットで力強いベース・ラインもすさまじい。