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Jimmy Smith ‎– A New Star - A New Sound, Vol. 1 (1956)

 R&Bバンド出身のピアニストだったJimmy Smithは、それまでジャズの世界では全く日陰の存在であったハモンドB-3オルガンを、本作の衝撃的なサウンドの力であっという間に花形楽器の地位にまで押し上げた。ジャズ史においても楽器の歴史においても重要な一枚である。
 本作の制作には、事前に細やかな気配りがめぐらされていた。パンチのある音を目指したSmithは、主役のメロディをひき立てるベース・ラインの音楽理論を学び、そのためにフット・ペダルには独自の改造まで施している。さらにRudy Van Gelderは録音の際、オルガンの発する機械音を拾わないように複数のマイクを離して設置する試行錯誤もしなければならなかった。
 収録曲はほとんどがスタンダードだが、そのサウンドは驚くほど迫力に満ちている。「The Way You Look Tonight」の攻撃的なイントロと、息つくひまもない素早いタッチはまさに発明と呼ぶにふさわしく、つづく「You Get 'Cha」では一転してゆったりとしたテンポとソウルの熱が見事に両立する。「But Not For Me」はアルバム中でも極めつけの一曲で、若きSmithの情熱はプレイが進むうちにどんどん加速し、最後まで一切途切れることがない。Horace Silverの書いた「The Preacher」もまたファンキーだが、ここでは特にThornel Schwartzのギターが際立っている。
 アルバムのタイトルも実に端的だ。オルガン・ジャズの産声ともいえる〈新たなサウンド〉、そしてブルーノートのドル箱に成長する〈新たなスター〉。看板に偽りなしとはこのことである。