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Jesse Davis – ¡Jesse Davis! (1970)

 かつてJohn Lennonがリバイバル・アルバムの中で「Stand By Me」を歌う傍ら、心にしみるスライドを弾いていたのが、職人的ギタリストJesse Edwin Davisだった。Ringo Starrのヒット・シングル「No No Song」をはじめ、George Harrisonが主催したバングラデッシュのチャリティー・コンサート、さらにはThe Rolling Stonesの幻のTV番組『Rock And Roll Circus』のステージにも、Davisの姿はあった。
 1970年、Taj Mahalのバンドを卒業したばかりのDavisは、当時スワンプに傾倒していたEric Claptonの働きかけにより自身のソロ・アルバムの制作にとりかかった。ブルースを中心としながらも、ボーカルやピアノのメロディの中に、カントリーやジャズの持つ滋味をいたるところに光らせている。うねるグルーヴが印象的な「Reno Street Incident」だが、決してただ重たいだけに終始しておらず、「Golden Sun Goddess」はそこはかとなくラテンの風味がある。「Every Night Is Saturday Night」などはハード・ロックとニューオリンズのミックスから生まれた素晴らしいパーティー・チューンだ。
 Van MorrisonのナンバーをThe Bandの「The Weight」風のイントロで料理した「Crazy Love」ではアレンジの妙が活きている。こうした本作の素朴な魅力を引き出しているのは、John SimonやLeon Russellを始めとしたDavisと波長の合うミュージシャンたちで、その中にはTaj Mahalのバンドでともに活動したChuck Blackwellの名もある。
 ネイティブ・アメリカンの姿をあしらったジャケットの絵は、コマンチ族の血を引くDavisの父親が描いたものだ。Davisが70年代に残したアルバムは等しく名作だが、このアートワークは本作に特別な価値を与えている。