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The New Glenn Miller Orchestra – The Authentic Sound Of - Today (1961)

 ビッグ・バンド・ジャズの熱が再燃しつつあった戦後のアメリカにおいて、Glenn Millerサウンドの復活を求める人々の渇望はより深まっていった。1950年にThe Glenn Miller Orchestraの屋号が降ろされて久しいなか、契機となったのはJames Stewartが主演した映画『グレン・ミラー物語』だった。映画の大ヒットという追い風を受けて、Millerの盟友であるドラマーRay McKinleyをリーダーに、新生のThe New Glenn Miller Orchestraが56年に活動を開始した。
 だが初期TNGMOの活動の真価は、オリジナルのレパートリーを再演するだけにとどまらなかった。50年代の彼らのLPを聴けば、当時の流行だったR&Bのテイストを積極的に取り入れるなど、バンドが常にモダンたらんとしていた姿勢がうかがえる。61年ついに発表された『The Authentic Sound』は、いわゆる往年の名曲集と呼べる初めてのLPで、スイング・リバイバルにおける総決算を示す永久不滅の名盤である。
 「In The Mood」におけるテナー・サックスの白熱バトルは、Bobby JonesとLou Chevによって見事に再現されている。またスイング・ジャズとしては複雑な「Anvil Chorus」や、ブルースを軍隊楽風にアレンジした「St. Louis Blues March」などは、キレのいいMcKinleyのドラムによって重厚なイメージに作り上げられていった。
 「Moonlight Serenade」はMillerサウンドを体現した、文句のつけようのない一曲である。「Tuxedo Junction」はそれと対照をなす現代的な仕上がりで、続く古典の「Little Brown Jug」では高らかなEd ZandyのトランペットとRay Desioのトロンボーンがソロを披露している。映画のラストにも使用されたことでファンにはひときわ思い入れの深かったこの曲は、本作でも華やかなエンディングを締めくくっている。