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Joe Farrell – Outback (1972)

 『Outback』は不思議なアルバムだ。60年代のモーダル・ジャズとJoe Farrell自身が後に参加するReturn To Foreverの中間に位置している本作には、自由なフレージングとエモーショナルなドラムが、Chick Coreaの鮮やかなエレキ・ピアノのフィルターを通して伝わってくる。CTIレーベルの数ある傑作の中でも独特な雰囲気をたたえた一枚だ。
 前作『Joe Farrell Quartet』から続いて参加したCorea、The Jazz CrusadersやHerbie Hancockへの参加で知られるベーシストBuster Williams、Miles Davisのグループで活躍していたAirto Moreira。彼らはいずれもフュージョンの世界で名声を確立しつつある存在だった。そこへコントラストを生むのが、John Coltrane的なモーダルなプレイを奏でるFarrellとElvin Jonesの存在である。「Sound Down」におけるソプラノ・ソロとドラムの緻密な絡み合いなどはその最たる例だ。また、フルートとピッコロのオーバーダブを駆使した「Outback」や、Coreaが作曲したワルツ風の「Bleeding Orchid」といった個性的なナンバーもある。
 フリーのようなイントロに始まる「November 68th」では、Farrellの堂々としたテナーのあと、彼に続くようにメンバーがソロを展開していく。特にJonesの稲妻のようなドラムからメイン・テーマへ戻るラストなどは、インパルス!レーベル時代のColtraneの名演の数々を否応なく思い起こさせる。