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Wilko Johnson's Solid Senders (1978)

 物事の崩壊とは、いつだって突然やってくるものである。たとえそれが、お世辞にも仲良しグループとは言い難かったDr. Feelgoodだとしてもだ。彼らの場合、薬物で錯乱したWilko Johnsonがステージを台無しにしてしまったハンマースミス・オデオンでの公演がそれだった。Johnsonの立場はたちまち危ういものとなり、最終的にアルバム『Sneakin' Suspicion』を最後にバンドを脱退している。彼はこのドラッグ禍について〈きっと脳ミソが溶けちまってたのさ〉と後年に語っている。
 Johnsonの再出発となったのが、The Count BishopsのメンバーだったSteve Lewinsらと結成し、自らがボーカルも執ったバンドSolid Sendersだった。シングル「Walking On The Edge」の選曲はDr. Feelgood版の発表にぶつける形となったうえに、B面の「Dr. Dupree」に至ってはレゲエ・チューンという驚くべき内容でもあった。
 とはいえ、相変わらずJohnson節のギターがさく裂する「Blazing Fountains」や、グッド・オールドかつ危険な雰囲気の「Everybody's Carrying A Gun」にはパブ・ロッカーとしての闘志がしっかりと掲げられている。だがなんといっても白眉はライブ音源を収録したEP(当時は限定の特典レコードだった)で、これにはMcKinley Morganfieldの伝統的なトレイン・ソングをロックンロール風に料理した「All Aboard」や「Rock Me Baby」など熱のこもるブルースが目白押しなのだ。「Highway 61」におけるJohn Potterの軽快なバレルハウスの香りは、Dr. Feelgood時代では味わえなかったJohnsonの新境地だ。
 このバンドも結局は長続きしなかった。だがドラマーのAlan Plattは後のJohnsonのソロワークや、彼とLew Lewisとの競演にも立ち会っている。