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Tony Joe White – Black And White (1969)

 1969年に大ヒットした「Polk Salad Annie」で、Tony Joe Whiteはスワンプ・ロックの理想形をたたき出して見せた。重厚でファンキーなサウンドはもちろんのこと、およそ南部人にしか書けない(あるいは分からない)内容の歌詞はElvis Presleyの強い共感を誘い、彼の晩年のステージには欠かせない大切なレパートリーにもなった。
 Whiteは他にも「Willie And Laura Mae Jones」で、アメリカ南部の素朴な生活を描いている。「Aspen Colorado」はしみじみとした郷愁を感じさせるフォーク・ロックで、彼の低く力強い歌声が、この曲では限りなく繊細なトーンで聴く者の心を打ってくる。最もファンクに傾倒した「Don't Steal My Love」では掻きたてるようなギターとシャウトを聴くことができる。
 地を這うようなグルーヴとWhiteの語りから始まる「Polk Salad Annie」は、後にトレードマークのようになる特有のタメと、メンフィス風のぞくぞくするようなホーンが、南部のじっとりとした雰囲気を象徴している。「Baby Scratch My Back」はSlim Harpoがヒットさせたブルースのカバーで、ロックにアレンジされてはいるがなにより印象的なのはハープの音色の再現度の高さだ。
 Whiteの書いた歌は多くがロックのスタンダードになった。しかし、そのソング・ライティングの才能と同様に、本作では歌やギターの演奏もすでに成熟しきっている。驚くべきことに、録音当時の彼はまだ20代半ばだったのだ。