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Gram Parsons – GP (1973)

 自身のThe International Submarine BandやThe Flying Burrito Brosはもちろんのこと、The Byrdsにおける活動においても、天才Gram Parsonsの存在が放つ影響力は多大なものがあったといえる。Parsonsの携わった作品はカントリー・ロックという新たなジャンルを定義したが、いずれも大きな商業的ヒットには繋がらず、またそれぞれのバンド活動も長続きしなかった。失意の中Chris Hillmanの紹介でEmmylou Harrisと出会ったParsonsは、初のソロ・アルバムとなった本作『GP』の一部で彼女の歌声を大きくフィーチャーし、カントリーの伝統的な男女デュエットのスタイルを踏襲することにした。
 当初は業界の大御所Merle Haggardが本作をプロデュースする予定だったが、土壇場でRic Grechが手掛けることになった。ジャズ・ロック畑の分野で知られるGrechは、意外にも本作ではのどかで秀逸な「Kiss The Children」のライティングでも貢献している。
 Harrisのほかに特筆すべきなのは、ドブロで参加したJames Burtonやベテランのスティール・ギタリストBuddy Emmonsらが、本格的なナッシュヴィルのサウンドをもたらしていることだ。「Streets Of Baltimore」は有名なBobby Bareのバージョンよりもカントリー然としているし、「That's All It Took」はByron Berlineのフィドルによって極上の仕上がりになっている。
 またParsonsのオリジナル曲も同様に素晴らしく、まるで古典のような雰囲気を湛えた「Still Feeling Blue」や、どっしりとしたブラスが響くロックンロール「Big Mouth Blues」などが印象的である。「She」のようなゆったりとしたバラード曲はParsonsの朴訥とした歌心が最高だ。
 HarrisとParsonsの豊かなハーモニーは、次作の『Grievous Angel』で真骨頂を迎える。しかしParsonsが薬物とアルコールの過剰摂取により26歳の若さでこの世を去ったため、同アルバムは残念ながら彼の遺作となってしまった。