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James Cotton – Cut You Loose! (1968)

 Muddy Waters Bandで活躍した歴代のハーピストは凄腕のプレーヤー揃いだったが、Little Walter JacobsやJunior Wellsをはじめ、いずれも早熟な天才ばかりだ。長年にわたりWatersを支えたJames Cottonも同様で、シカゴへ上京してバンドに加入した当時彼はまだ未成年だったのだ。Cottonの黄金時代がいつなのかを議論することはまったく不毛だが、ヴァンガード期の録音が、最もきらびやかで充実したサウンドとして挙げられることには疑問の余地がない。
 『Cut You Loose!』はロック全盛の自由な時代の空気がただよう西海岸で制作された。成功の秘訣はひとえにニューオリンズ系のピアニストWayne Talbertを迎えたことで、サイケとファンクの香りをほのかに匂わせた極上の仕上がりとなっている。ハイトーンなブロウのツボをしっかりと抑えた「Honest I Do」はほんの小手調べだ。Talbertとのデュエットをたっぷりと聴かせる「Coast Blues」や、ファンキーな「Cut You Loose」、そして「Ain't Nobody's Business」では熱いソウル・シンガーとしての一面も見せてくれる。「(Please) Set A Date」はMemphis Minnieが戦後に録音したブルースで、本作でギターを弾いているのはGuitar Jr.、つまり若いころのLonnie Brooksである。けだるい雰囲気のオルガンとサックスが決まった「Slippin' And Slidin'」はLittle Richardの曲とは全く異なるアシッド・ブルースで、さらにラスト曲の「Negative Ten-Four」にはラテン・ジャズ・セッションが展開するという驚きがある。
 この時代のCottonをさらに掘り下げるのならば、本作からの数曲に加え、名アンソロジー『Chicago/The Blues/Today!』の収録曲をコンパイルした『Vanguard Visionaries』も無視するわけにはいかない。これにはライブでもおなじみの「Rocket 88」や、ハープ・ブルースの大傑作「Cotton Crop Blues」(なんと彼が16歳の時に書いた)の素晴らしいテイクが入っている。