Bukka White – Parchman Farm (1969)
1940年代。田舎からビール・ストリートに上ってきた若き黒人Riley B. Kingは、いとこのブルースマンBukka Whiteから多くのことを教わった。豪快でいながら繊細さもうかがわせるギターの音色、地獄の経験に基づいた生々しいストーリー・テリングの力…。そしてなにより、一人の黒人がアメリカで生き抜くためには、どれほどタフでなければならないのか、彼はWhiteとの暮らしのなかで学んでいったのである。そして数年後、Rileyは〈B.B. King〉と名乗るようになった。
『Parchman Farm』はWhiteの戦前の初期音源をまとめたアルバムだ。Whiteの人生がこのレコードには詰まっている。タイトル・トラックである「Parchman Farm Blues」は、彼が殺人の容疑でぶちこまれた刑務所(演奏のうまさのおかげでWhiteは減刑を受けることができた。また、冤罪の可能性も指摘されている)の歌だ。世界に別れを告げるように歌われるどん底のブルースで、突き刺さるような悲痛さを湛えている。
69年に発表された本作は、NYのフォーク・リバイバル運動にディープ・サウスの文化がどれだけ深い影響を与えていたかも遅ればせながら証明した。若きBob Dylanがデビュー・アルバムの中で「Fixin' To Die」を巧みにカバーしていたのだ。Washboard Samの伴奏で歌われる原曲では、Whiteは死に対峙し、神に祈り、家族を憐れむ。Whiteの中でも特に抽象的な歌がDylanにインスピレーションを与えた事実は、Paul Oliverの著書『ブルースの歴史』の序文の中で印象的に振り返られている。