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The Cannonball Adderley Quintet – Country Preacher (1970)

 50年代はハード・バップの名盤『Somethin' Else』でジャズの歴史に名を刻んだJulian Adderleyだが、1966年の『Mercy, Mercy, Mercy!』のヒット以降、自身の持ち味だったソウルフルなサウンドにはますますの拍車がかかっていった。1969年、シカゴの教会で行われたこのコンサートには、ファンクはもちろんのこと、力のこもったブルースとゴスペル的な観客との呼応までもが、圧倒的なグルーヴの中で入り混じっている。
 このライブが行われた集会は、もともとはシカゴに暮らす貧困層への食糧支援運動を目的としたものだった。主催者であるRev. Jesse Jacksonは、当時Martin Luther King, Jr.の後継者とも目された公民権運動家でもあり、Adderleyは彼に敬意を表してアルバムを『Country Preacher』と題している。
 Jacksonの演説からスタートする「Walk Tall」は、当時のAdderleyのスタイルをよく表している。各々のアドリブをあえてそぎ落とし、一貫してグルーヴを追求するこの一曲で、Adderleyは観客の心を見事につかんでみせた。印象的なタイトル・トラックだが、これは実はJoe Zawinulの筆によるもので、アンサンブルの抑揚のつけ方などは名曲「Mercy, Mercy, Mercy」のそれとよく似ている。
 Nat Adderleyがボーカルを執った強力なブルース「Oh Babe」に続くのは、メンバーのソリストとしての見せ場が詰め込まれた大曲「Afro-Spanish Omelet」。エンディングの「The Scene」では熱いコール・アンド・レスポンスが繰り広げられる。
 『Country Preacher』はソウル・ファンにも訴えかけるアルバムである。本作でのAdderleyはKing Curtisと同じ領域にまで踏み込んでいる。