Sonic's Rendezvous Band – City Slang (1999)
元MC5のギタリストFred "Sonic" Smithが率いたSonic's Rendezvous Bandは、デトロイトのアンダーグラウンド・シーンではカルト的な存在として知られたにも関わらず、Smithの存命中にはたった1枚のシングル曲をひっそりと制作するだけだった。1994年にSmithが亡くなってからは、妻Patti Smith協力のもとライブ録音を中心に信じられないほど多くの音源が発掘され、バンドは徐々に幻の存在ではなくなりつつある。そんな中でも本作は、伝説のシングル「City Slang」の78年オリジナル版が収録された必聴の一枚だ。
ガレージ・ナンバーとしては比較的長尺な「City Slang」は、フラストレーション満載の歌詞をシンプルなリフに乗せて駆け抜ける永遠の名曲である。Gary Rasmussenのベースに始まり、SmithとScott Morganがまるで互いを切りあうかのようにギターをかき鳴らす。中盤におけるちょっとしたピアノの使い方やSmithのシャウトにPattiの「Rock N Roll Nigger」の面影を感じさせるのも、マニアにはたまらない場面だろう。全編にわたって重量級のドラムを叩いているのはThe StoogesのScott Ashetonである。
アルバムには他に地元デトロイトやアン・アーバーで録音された貴重なライブ音源が収録された。エネルギッシュな「Gone With The Dogs」、スタンダードの攻撃的な解釈を見せる「Sweet Little Sixteen」、ブルージーな「Clock With No Hands」と、実に豊かなナンバーが揃っている。中でも興味深いのは「Goin' Bye」で、これはベトナム戦争で命を落とした兵士に捧げたバラードだという。