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Chicken Shack – Imagination Lady (1971)

 Chicken Shackの中心的人物であるStan Webbは、かねてからのブルース・ブームの中で「I'd Rather Go Blind」や「Tears In The Wind」といったヒット・シングルのうま味を知った。しかし、ハード・ロックに接近したアルバム『Accept』は商業的に不発に終わり、さらにメンバーの脱退もあったことでWebbは音楽的な路線やレーベルを含めてバンドを完全に生まれ変わらせることにした。
 元The GodsのベーシストJohn GlascockとWayne Fontana脱退後のThe Mindbendersでドラムを担当していたPaul Hancoxを迎え、パワー・トリオとなったChicken Shackは、冒頭の「Crying Won't Help You Now」で実に骨太なアンサンブルでリスナーを挑発する。モダン・フォークの名曲「If I Were A Carpenter」のカバーでは、激しい演奏ながら原曲のしっとりとした雰囲気が繋ぎ止められ、一方Freddie King(Webbのヒーローのひとり)の当時の新曲だった「Going Down」を、誰よりも早くハード・ロックとしてアレンジしてもいる。
 だがこのアルバムの真価は新鮮なオリジナルにある。「Telling Your Fortune」は11分を超えるかつてない大曲で、Hancoxのパワフルなソロをたっぷりとフィーチャーしている。「The Loser」もUKハードの典型ともいえる一曲だが、こういった歌は以前まで在籍していたブルー・ホライゾンではなかなか考えられなかっただろう。
 『Imagination Lady』はChicken Shackの目指す新境地を明快なものにしたが、『Accept』と同様に成功はしなかった。この結果に失望したGlascockがバンドに早々に見切りをつけてCarmenに参加していったために、この優れたトリオが一枚しかLPを残さなかったのは残念なことである。