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Pages – Pages (1981)

 Richard Pageは時おりAORの枠を超えて話題にあがる人物である。最近ではRingo Starrが国際平和デーに向けて作ったシングルへ参加し、もっと遡れば、Vektroidが歴史的名盤『Floral Shoppe』の中で積極的にPagesの楽曲をサンプリングする、という降ってわいたような出来事もあった。
 Vektroidが目を付けたのは、キャピトル・レーベルに移籍して制作した81年の『Pages』からの一曲「You Need A Hero」だった。このアルバム自体は、Jay Graydonのプロデュースによって全体的にスタイリッシュな雰囲気に仕上がっているが、Bobby Colombyの手掛けた「You Need A Hero」はSteve Georgeのふわふわしたシンセの音が印象に残る非常にスムースなナンバーである。
 こうした一見彼ららしからぬ曲もあるとはいえ、Tom ScottやJeff Porcaro、さらにはAl Jarreauまで参加した豪華な本作には退屈な曲などは一切存在しない。「Fearless」ではGraydonがギターで参加し、美しいコーラス・ワークをひき立てる。アリーナ・ロックを意識した「Automatic」のサウンドは驚きだが、「O.C.O.E. (Official Cat Of The Eighties)」における非常に複雑なドラミングにも大きな意外性がある。しかし、このドラムはPorcaroではなく、当時Frank Zappaのバンドで活躍していた頃のVinnie Colaiutaによるもの、といえば納得だろう。
 一曲ごとに高いクオリティを保ちながら、本作はセールス的には成功しなかった。GeorgeとPageが栄光を掴むには、Pagesの解散後に結成したMr. Misterのシングル「Broken Wings」が、全米1位を獲得した85年まで待たねばならない。