Carl Perkins – Introducing... Carl Perkins (1956)
1955年のアルバム『Dexter Blows Hot And Cool』におけるDexter Gordonとの共演がDootsie Williamsの目を惹き、Carl Perkinsは生涯で唯一となったリーダー作の録音のチャンスをつかんだ。ドラマーにはLawrence Marableが呼ばれ、ベーシストは前述のアルバム・セッションにも参加していたLeroy Vinnegarが引き続き務めている。
西海岸のピアニストは概してスインギーな演奏やブルースに定評がある者が多いが、Perkinsは冒頭の「Way Cross Town」で、ハード・バップの影響を感じさせる鋭いタッチでリスナーに強い印象を与える。後天的な障害を持っていた彼は左腕の肘で低音を弾く独特なスタイルだったといわれており、裏ジャケではその様子が写真つきで紹介されているのだが、だからといってサウンドに乱暴なイメージのようなものは一切表れていない。
「MIA」のタイトルでも知られる「Westside」のプレイには、Perkinsの優れた即興のセンスが惜しみなく注がれているのが分かる。しかし、だからこそスタンダード「You Don't Know What Love Is」の優雅さや、「Why Do I Care」における無駄のないスイングの感覚がいっそう際立って聴こえてくる。ラストを飾る「Carl's Blues」も実にシンプルで、彼の才能の幅広さをしっかりと証明する一曲だ。
Perkinsは30歳を目前に薬物中毒によって命を落としたため、本作のほかは7インチを数枚残しただけでキャリアを終えてしまった。彼のもう一つの功績はスタンダード「Groove Yard」を作曲したことだ。この曲はPerkinsの死後にWes Montgomeryが兄弟とともに取り上げて以降、Joe PassやPat Martinoといったギタリストたちのお気に入りとなった。