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2022年8月の記事一覧

最期が衝撃的な「ヘヴン」

心残りは「ヘヴン」がどのような絵なのかわからないままなことだ. 2022年の「ブッカー国際賞」最終候補作であり,芸術選奨文部科学大臣新人賞と紫式部文学賞のダブル受賞作でもあるということで,「ヘヴン」を読んでみた. 全体を通して,こういう話は好きじゃない.読むことも気乗りしない.本書「ヘヴン」を読みながら,何度かページをめくるのを止めつつも,それでも,なんとか最期まで読み切った.そこに描かれていた公園でのラストシーンは衝撃的だった. 人それぞれ,できることとできないことが

三体のアイディアが詰まる劉慈欣短篇集「円」で久しぶりのSFを楽しむ

タイトルの通り.久しぶりにSF小説を読んだ.計13の短編が収録されていて,その中には印象に残った作品も残っていない作品もあるが,総じて,発想が凄いなと思う. とりわけ吹っ飛んでいるのは「郷村教師」か.貧しい村の名もなき小学校教師による「最後の授業」が銀河炭素生命連邦艦隊の行動を左右するとか. 円円みたいに,何かに熱中し続けて,自由に熱く生きるのもいいなと思った. 「円」は最後の作品のタイトルだが,円周率の円だった.不死を求めた秦の始皇帝と円周率がこんな風に結びつくとは.