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トリプタンの進化系? 新しい頭痛薬ジタン

2022年、新しい頭痛薬が発売されました。
ラスミジタン、商品名はレイボーです。
頭痛が起こった時に内服する頭痛頓挫薬に属します。
ジタン系に分類されるこのお薬はトリプタン系の進化系との声もあります。
具体的にどうすごいのでしょうか。また使用上の注意点はなんでしょうか?


ジタンは頭痛にどう効くの?

ジタンは5-HT1F受容体作動薬と呼ばれます。
5-HT1F受容体はセロトニンという脳内の伝達物質を受け取り、CGRPなどの炎症物質の抑制や脳への痛みの情報を制御する働きがあります。
昔ご紹介したCGRP関連抗体薬と同じでCGRPにも作用するお薬ですが、抗体薬はCGRPが出ることを抑制する予防薬、ジタンは今まさに放出されようとしているCGRPを抑える急性期治療薬ですので使うタイミングが違います。
まさに今、片頭痛が起き始めてる!というタイミングで内服することで頭痛発作を抑えることが確かめられているお薬です。

ちなみに、CGRP関連抗体薬については、こちらをご覧ください↓


トリプタンとの違いは?

同じセロトニン受容体作動薬として、昔からよく使用されるトリプタンがあります。
ジタンはトリプタンに比べてより頭痛に関係する受容体だけ狙い撃ちすることで、余計な副作用が出ることを軽減したお薬と言えます。

先ほど、セロトニン受容体といいましたがめちゃくちゃ種類があります。
セロトニン受容体の中でまずHT1~HT7まで7種類あり、HT1の中でも更にHT1A~HT1Fと細かく分かれます。脳によく発現しているのはHT1の様です。
その中でジタンはHT1Fに作用するお薬といいましたが、トリプタンはHT1Fに加えてHT1BやHT1Dにも作用します。
どうやらHT1の中でも特に頭痛を抑えるのはHT1DやHT1Fあたりだろうということがわかってきたのですが、トリプタンのHT1Bには血管収縮作用があることも知られています。
このHT1Bの作用から、トリプタンは血管が収縮するとまずい人(脳卒中や心筋梗塞、不整脈や片麻痺性片頭痛)には使えないデメリットがありました。
ジタンはHT1Fだけに作用するので血管系の病気がある人にも比較的安全に使えるお薬として画期的なのです。


じゃあトリプタン飲める人はジタンはいらないの?

ご高齢の方は血管系の持病をお持ちの方も多く、副作用でトリプタンを使えなかった方は大勢いますのでまさに救世主といえますね。
では、特に血管系の病気もなく今までトリプタンを使用できてた人はジタンに切り替えるメリットはないのでしょうか?

ジタンにはそれ以外のメリットもあり、個人的には一部の頭痛持ちさんは試してみてもいいんじゃないかなと思っています。

ジタンは脳血液関門を通過する。

脳には脳血液関門(BBB)というバリアがあります。
脳に有害なものを血液から脳内に入れない働きがあり、大事な脳を守っています。
ただ、このBBBにより多くのお薬は脳の中に入ることができません。
トリプタンも比較的新しい薬はBBBを通過しやすくなっていますが、基本的には通過できない薬です。
一方、ジタンはBBBを通過することができると言われています。
つまりトリプタンは脳の外側でしか働かなかったのに対し、ジタンは脳内でも作用して薬効を発揮することができます。

アロディニアや周辺症状にも有効?

慢性頭痛の方はアロディニアを伴う方も多いです。
これは、脳が痛みを経験しすぎてちょっとの刺激にも過敏に痛がってしまうことを言います。
また片頭痛は光過敏や音過敏などその周辺症状がきつい人もいます。
これらは脳内での話であり、BBBを通過しないトリプタンはなかなか効果が期待できなかった症状です。

対してジタンはBBBを通過し、脳内のHT1F受容体に作用することでアロディニアや周辺症状にも有効でないかと言われています。

内服のタイミングがトリプタンほどシビアではない可能性

頭痛の痛み刺激は、硬膜や硬膜につながる三叉神経の抹消(脳の外)で発生し、神経を通じて脳内に伝わります。
BBBを通過しないトリプタンは基本的に脳の外で起こった炎症を抑えますが、脳内に伝わった痛みのシグナルには無力でした。
そのため、痛みの起こり始めに飲まないと効果が期待されにくい問題がありました。
これは、手遅れにならないように患者さんはちょっとの心配でトリプタンを飲んでしまい、薬物使用過多を招きやすいという二次的な副作用も潜んでいるといえます。
ジタン系は、脳内に効くお薬なので多少はタイミングが遅くても著効することが期待されています。
また根拠は薄いですが、トリプタン使用過多の患者さんは非常に多いので、お守りとしての期待度はジタンが高いように思えます。

こんな人はジタン試してみてもいいかも

一番は血管系のリスクでトリプタンが使えなかった方です。
次に片頭痛発作に伴うアロディニアなどの周辺症状を緩和させたい方も、一度試してみていいかもしれません。
あとは、トリプタンを3日に一回以上飲んでしまう慢性頭痛の方です。
ジタンにすることで早く飲まなければという焦りが解消されるのであれば、替えてみる価値はあると思います。

ジタン内服時に気をつけることは?

薬物の使用過多の方におすすめしましたが、決してジタンは使用過多による頭痛を起こさない薬ではありません
ジタンに変えたことをきっかけに鎮痛剤の飲み過ぎは防げればいいなというだけで、ジタンはトリプタン比べて頻用して良いよいうわけではないのでご注意ください。
また、トリプタンよりめまいの頻度が多い様なので、飲んだ後に車の運転はやめておきましょう。

まとめ

ジタンは片頭痛急性期の痛みを抑える最終兵器としての期待値は高いです。
しかし、決して予防的に毎日飲んだりしていい薬ではないのでご注意ください。


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