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05 禁飲食指示とは

 肉体的、疾患的に口から食べられなくなることはある。しかし、現場でよく聞く症例としては、「昨日まで普通に食べていたのに、発熱して入院したら“誤嚥性肺炎”と言われ、その日から禁飲食。その後も食べさせてもらえない」というもの。本人、家族が口から食べたいと懇願しても、医療者から許可が出ないということも多い。病院から退院時のサマリー(連絡書)には「嚥下機能廃絶」と書かれているものも何枚かみてきた。その後口から食べられた人もいる。

 以前から疑問があった。医師が患者に対して「口から食べていけない」という権利はあるのか?この疑問をストレートに聞くために企画したのが第4回タベマチフォーラム。武蔵野大学法学部特任教授の樋口範雄先生にご登壇いただき、そのものズバリ聞いてみた。

樋口範雄先生

 樋口先生の第一声は、「面白いことを言うねぇ。法律家はそのことを権利とは言わない。権限と言うんだよ」と無知を指摘された。話の要点としては、医療者としては、その方の病状を鑑み、「口から食べてはいけない」という権限があるとのこと。ただ、患者サイドがそれに従うかどうかは別問題。納得できなければ従わなければよい、とのこと。シンプル。至極真っ当な話だった。

 そこで重要になるのが自己決定。「私が決めたのだからそれをやる」という自己決定が、この禁飲食の指示に対して効いていない。むしろ対立している。これが大きな問題になる。

 問題はもう少し別のところにもある。患者が入院している場合、言葉は悪いが人質に取られていると家族は思っている。担当医の言うことに逆らったら何もしてもらえないかもしれない、扱いが悪くなると思っている家族は多い。実際そういう声を聞いたことがある。ある意味パワハラだ。
 そして、残念ながらセカンドオピニオンになる病院も現状は少ないことだ。禁飲食志向は多くの病院であることなので、その病院を代わったからと言って好転することも少ない。

 そんな中、先日、素晴らしい病院の取り組みを聴いてきた。熊本市にある桜十字病院の取り組みだ。以前から噂には聴いていたが、「口から食べるプロジェクト」としてすでに10年の実績もある。正直、病院には無理、在宅で頑張るしかないと思っていた。しかし、実績を出している病院があるということに感動した。

桜十字病院の「口から食べるプロジェクト」

 すぐに医療者の禁飲食志向が変わるものではない。医者とスタッフの関係、病院と患者の関係はフラットではない。しかし、先行事例があれば可能性が見えてくる。
 食支援には問題点はあるが、伸びしろが十分にある。病院でも、在宅でもまだまだできることはありそうだ。

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