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15 食支援は何をする?

 食支援とは何をすることか?具体的に挙げると数限りなくなってしまうので、食支援で行うべきことを考えていく。
 前述したように食支援の定義は以下のように定めた。

本人・家族の口から食べたいと言う希望がある、もしくは身体的に栄養ケアの必要がある人に対して①適切な栄養摂取 ②経口摂取の維持 ③食を楽しむことを目的としてリスクマネジメントの視点を持ち、適切な支援を行っていくこと。

五島朋幸:最期まで食べられる街づくり.静脈経腸栄養.Vol.30,No.5,P1107-1112,2015.

 この中で「①適切な栄養摂取 ②経口摂取の維持 ③食を楽しむこと」を目的としている。実は、食支援とだけ言えば、経済支援や食料調達なども含まれてしまうが、私が考えている医療、介護現場の食支援としてこれら3つが目的と考えている。また、特に順位付けをしているわけではないが、自分自身が食支援に入る現場では、この順番にサポートを考えている。

適切な栄養摂取
 食べることの1つの大きな目的は栄養摂取である。食べる機能が低下したり、意欲が低下してくると一番に栄養の問題が表出してくる。栄養学的な評価でなくても、痩せる、動きが悪くなる、元気がなくなる、声を出さなくなるなどの状況で判断できる。
 栄養状態の改善のために食べていただきたいが、機能が低下していて食べられない。そこで、食べる機能向上のために間接訓練(食べるための筋トレやマッサージ、ストレッチなど)をすることがあるが、明らかな栄養不良があるようなときは実施できない。まずは栄養状態の安定を図るべきだ。
 意外に感じるかもしれないが、その方に経管栄養(胃ろう、腸ろうなど)が入っていれば、栄養摂取経路があるのでこの問題をクリアできる。実際、経管栄養を使用していて口から食べられないという人の方が、栄養問題を抱えている人より食べられるようになる可能性は大きい。しかし、皮肉にも胃ろうバッシングで経管栄養が避けられて、十分な栄養経路が出来ていない方が多くなっているように思う(データはなし)。

経口摂取の維持
 口から食べていない方は少しでも食べられるように、少し食べている方はその量や質を向上させること。そのために食べる機能を向上させるだけでなく、環境調整は欠かせない。食事形態はもちろん、食事姿勢、食具、そして重要な食事介助。まさに食支援の本丸である。

食を楽しむ
 この項目は避けられない。口から食べることに障害が生じると、食事形態で対応することが多い。しかし、それによって味が落ちてしまったり、見た目が悪くなってしまえば食を楽しむことはできない。その結果、食べる機能が完全になくなった訳でもないのに経管栄養、経静脈栄養を選択する人も出てきてしまう。
 また、食事環境面も関与する。ベッド上で食べることになれば個食になってしまい、食卓を囲むことが出来ないなどの問題が生じる。
 「楽しむ」は、本人の主観によるところが大きく、マニュアル化できるものではない。だからこそケアの真髄と言えるだろう。

 食支援の目的と、それに対して実施する支援について考えてきた、実際の支援は機能向上と環境西部に大別できる。これらをうまく考えながらプログラムし、食支援を実施する。


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