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PSRを考えるパート2 〜ほんとに高PSRって割高?低PSRって割安?〜

どうも。PSR撲滅委員会代表のBIZです。
PSRのその先へ行こうの第2弾です。

SNOWの100越えPSRは許容不可能なのか?
ZMのPSR 14以下は買いなのか?
こういう疑問に対して立ち向かうべくこのノートを作りました。

電卓を使って簡単にPSRのイメージを膨らませてみます。


ここでやってることは僕がお茶飲みながら適当に考えた独自のものです。
なのでバリュエーションの判定には使用しないで下さい。

ただ、PSRというものを考えたことがない人が本質、割高・割安感を考えてみるには発想は役に立つはずです。

あとで話がこじれるので先にPSRの基礎前提知識の話を簡単にすると・・
PSRは他業種との比較はできません
PSRに絶対的な割安・割高基準はありません。
比べるなら同じ銘柄での比較考察をお勧めします。

Price-SalesRatio
時価総額(発行株式数✖️株価) を1年間の売上で割ると出てきます。
つまり本質的には 『株価』と『売上』の比をみている指標になります。
株価があがるか、売上が下がればPSRがあがる
株価が下がるか、売上が上がればPSRがさがる
の関係にあります。


では唐突ですが質問。

🔴PSR 100は割高ですか?
   PSR 5は割安ですか?


この質問に対して即答で
100は割高!  5は割安!   と答える方のためにこのノートを作りました。

ここで僕が期待する答えは
「・・答えようがない!」  

です。



PSR100とは売上の100倍の時価総額が付いていることを表します。

質問です。
売上高成長率が+ゼロ%の横ばい企業が
PSR100→1になるのには何年かかりますか?

→一生なりません。

PSR100、つまり売上げの100倍を累計で回収するには何年かかりますか?

100年です。


投資できますか?生きてないですよね。


このように色々ケースで売上成長率毎にどのように売上を伸ばしていけるか
電卓を叩きます。

・売上成長率30%

を持続する企業がPSR100を回収するには?

今の売上に只ひたすら1.3を掛け続ける掛け算をします。
そしてそれを足し算して累計を出します。

売上が何年で何倍になるか?
そして売上の『累計』は何年で何倍になるか

1年目 1.3倍(1.3)
5年目 3.7倍(11.8)
8年目 8.2倍(31倍)
10年目 13.8倍(55.4)
12年目 23.3倍(96.6)
13年目 30.2倍(126.9)
17年目 86.5倍
18年目  112倍

これの見方は
例えば、
5年で売上は3.7倍になりました
累計11.8倍の売上になりました
と読みます。

⚠️PSR100→1まで達する売上増加を『PSR100を回収』とここからは表現します。

つまりPSR100倍を回収するのに
17-18年の間かかった。
売上累計なら
12年と13年の間かかった。
と以後表現します⚠️

PSR 30.2回収するのに13年。
売上累計なら約8年かかりました


近い具体例 :
ZM 成長率YoY+35% 
NCNO +29.1%

・成長率40%の場合の売上増加
5年目 5.4倍(15.3)
9年目 20.6倍(68.8)
10年目 28.9倍(97.7)
13年目 79.3倍
14年目 111.1倍  

PSR100回収するのに約14年回かかりました。
累計なら約10年(97.7)かかりました。

成長率YoY 40% PSR 28.9  こんな銘柄どっかゴロゴロしてませんか
これ安い高いどう思いますか?
具体例 直近OKTA YoY+40% 
AI +40.9%
U +42.6%
PLTR +35.5%



・成長率50%
5年 7.6倍(19.9)
8年 25.6倍(74)
9年 38.4倍(112.4)
10年 57.6倍
11年 86.4倍
12年 129.7倍


PSR100回収するのに11-12年かかりました。
売上累計なら約9年(112.4)かかりました。

AFRM YoY +54.8% 
MQ YoY +56.0%


・成長率60%
5年 10.4倍(25.4)
7年 26.8倍(69)
8年 42.9倍(111.9)
9年 68.7倍
10年 109倍

PSR100を回収するのに約10年かかりました。
売上累計なら約8年(111.9)かかりました。

ZI がYoY+60.1%
ZS +61.7%
CRWD +63.5%

・成長率70%
5年 14.1倍(32.1)
7年 41.0倍(97.2)
8年  69.7倍(167)
9年 118.5倍
10年 201.5倍

近い例 
DDOG +74.9%

PSR100に追いつくのに約9年
売上累計なら約7年


・成長率 80%
5年 18.8倍(40.2)
6年 34.0倍(74.2)
7年  61.2倍(135.4)
8年 110.1倍
10年 357倍

YoY80%ともなれば『持続できれば』7-8年でPSR100を回収できてしまいます。
累計なら6-7年。
近い例 DOCS +76.1%

・成長率100%
5年 32倍(62)
6年 64倍(126)
7年 128倍
10年 1024倍

100%成長持続となると圧倒的ですね6年〜7年で回収。
累計なら5-6年で回収。

10年持続(できれば)なんとPSR 1024も回収できてしまうという。
SNOW YoY+109%


こんな感じでほんとザックリ売上回収可能な年月を照らし合わせてみるとPSRの肌感が掴みやすくなるかもしれません。



鍵になるのは結局は「成長」が「どのくらい維持できるか」だと思います。

40%成長を5年続けるのと
100%成長を5年続けるのは難度が桁違いです。

かなり強引ですが、
売上成長率が40%でも10年持続できれば売上を28.9倍伸ばすことができます。
しかしもし1年間しか持続できない場合には1.4倍しか伸ばせません。
何が言いたいかというと、

同じ40%成長の企業AとBがあったとして、
成長が10年持続なA と
1年単発で成長が止まるBが許容できるPSRが同じ訳がないのです。
これがPSR単独でみることの罠の本質です。

大概PSRが話題にでる時はその企業の前後の業績の動きを抜きに点で語られることが多い印象です。

この場合恐らくAの方が高いPSRが付き、
Bの方が低いPSRが付いて市場では取引されていると思います。
PSRの低いBは割安と言っていいのでしょうか?
という話です。
PSRの低さにも『良い低さ』と『悪い低さ』があるということです。

相場の地合いの影響により株価が下がることによるPSRの低下

その企業への成長期待がもがれることによる株価低迷によるPSR低下は全く意味が違うのです。

これが今のSaasハイグロに起きているPSR低下の正体だと思います。

PSRは計算上はただの売上と時価総額の比を捉えたものに過ぎません。

持論ではありますが、


企業に対してつくPSRというのは業績の『点』ではなく『線』に対してです。

そしてその『線』は現時点までのものではなく『未来』へ繋がる『線』です。
これを誤解してる人が多いように思います。

注目すべきは
『成長のスピード』とその
『加速度』『持続』  『見通し』

だと思います。


具体的に言うと

1️⃣加速度

売上高成長率 同じ60%なら
推移が

A 20%→40%→60%
B 60%→60%→60%
C 100%→80%→60%
なら短期ではAにかかる期待が1番大きそうです。
さらに追加すると

(D 10%→20%→60% こういう加速タイプもありますね。ただこのタイプはその後成長鈍化の評価に苦しむ可能性もある。)

そしてその

2️⃣成長の持続
同じ60% なら
単発の60%より5年連続60%の方が価値があるんじゃないでしょうか

もしくは、

例えばある年+300%成長したとしても
来年+35%の見通しが見えた瞬間に高PSRは許容されなくなるかもしれない
(おや?どこかのZMか🤔)

とにかくPSRという概念上、
回収には年単位の時間をかけるものですから
1年しか続かない成長であればそこに対して許容されるPSRは高いまま維持するのは難しい

だからそのような企業がPSR 50→15とか下がったとして安易にお買い得というのは違う気がします。

大事なのはその+35%成長を『持続』させるか、
『再加速』の目があるかです。

もしくはEPS成長PER縮小の方向にどんどん向かうフェイズになる。
PSRを卒業してPERで評価される企業へ変化するということですね。

3️⃣持続の見通しやすさ

そもそもその成長はどういった要因で成り立つものなのか?
一過性のブームによるものなのか?
ビジネスモデルの構造で支えられる持続可能なものなのか
市場自体の拡大スピードは?
TAMの獲得余地は?
などなど

つまり、
ここで単純に数値化できない投資家としての目利きが問われると思います。

こうした1️⃣2️⃣3️⃣に加え、

粗利の高さ・営業利益率・セクター自体のブーム期待・経営陣への期待  地合いなどなど挙げたらキリがないですが総合的な評価でPSRが形成されていると思います。
PSRっていうか『株価』の話と同義だと思うんですが。

ある時気がついたんですが、
少し誇張して言えば

「PSR高いPSR高い!」ってのは
ある意味「株価高い!株価高い!」

って言ってるのとあんま変わらんなと。

なぜ株価が高い?いや 高い株価が許容されている?って考えた方が本質に近い気がします。

PSR PSR言ってますが本質は

「売上に対してどれだけ高値がつくか」

という競りみたいなものだと思います。
結局のところ僕がたどり着いた高PSRが許容される理由は・・

それでも欲しい人が多いから。
というシンプルなとこに辿り着きました。

で、どうして自信満々に欲しい人が多いのかを掘り下げる方が意味があるなと思いました。
その理由が単にミーハーや人気だけなら長期では自身が持てないなと。

逆もまた然り。

ただ具体的に御託を並べてこじ付けることはできます。

例えば、
SNOWの今のバリュエーションが受け入れられる大きな理由は170%越えNRRを持続させている「ビジネスモデル」&「時代の大きな潮流」だと僕は考えます。

110%成長が持続できなくとも110%→70%へ時間をかけて成長維持ができると考える場合には、

売上高成長率が40%の企業が達成するPSR28.9回収(10年)より 
よりSNOWのPSR100の回収の方がイージーとジャッジされるかもしれない

と個人的には思います。

市場がPSRを中心に見ているかどうかはわかりませんが(多分見てない)長い期間に渡ってあるPSRが維持されているのであればそれは何か要因があるということだと思います。

逆に+35%成長まで落ちてしまったZMのPSR13.8は低いんでしょうか?どうなんでしょうか?
今ZMは9年で14.8倍売りまで回収できます。
が、
先程も話した通りこの成長率+35%までの道のりが右肩下がりに落ちてきていて、かつまだ成長率が下げ止まっていないわけですから、
その分PSRは割り引かれます。

次もガイダンスに毛が生えたような数字であればさらに成長鈍化する予定です。

こういった背景があり下げられていると思うので、

結局のところ成長鈍化のストップ、
成長再加速を見せつけるか・ビジョンで明確に示して投資家の期待を煽れるか 
が今後ズームに求められていると思います。
それともう一つのビジョン PSR卒業PER評価へ変わっていくかですね。


この辺りはコロナ化で需要先食いしたSaasハイグロ全般に言えそうではあります。

以上、自論全開でしたがPSRに対する考察でした。
繰り返しますが、これは参考文献など何もないです
自分の頭の体操で作ったものであって、
正確にバリュエーションを評価するものではないです。
これがバリューエーションを考えるきっかけ、
公式に捉われないきっかけになったならば幸いです。

最後に一言。
PSRに否定的な意見ばかりになってしまいましたが、
同銘柄で業績と合わせて変化はチェックはしていますし、
簡便なスクリーニングには優れていると思います。
調べるきっかけになったりもします。

最後までお読み頂きありがとうございました🙇

※緩い感じで作ったのでしっかりチェックしておりません明らかな間違いありましたらご指摘くださると幸いです。

※なおこのノートではPSR 倍率と売上を使い回収と表現していますが、
実際は売上からいくらの利益を得れるかが重要であり売り上げ回収ではほんとに企業価値とPSRの釣り合いなどを単純には考えられないのですが、
便宜上わかりやすいのでこのような思考を使いました。  ご容赦。

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