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【ふしぎ旅】弁慶下駄掛石

 鎌倉へ向かう義経一行がこの地に差し掛かったところ、弁慶が道の傍らにある大きな石を指さして言いました。
「おい、みんな。この石はオレが那須山で修行三昧していたとき、下駄の歯に掛かって、挟まった石よ。取ろうとして軽く一振りしたところ、ここまで飛んできたのよ」」と言うと義経をはじめ、一同は大笑いしました。 

現地案内看板より
弁慶下駄掛石

 日本各地にある弁慶伝説の一つである。
 とは言っても、通常の義経伝説、吉野から奥州平泉までの逃避ルートでなく、こちらは奥州平泉から、頼朝の助けになればと鎌倉へ向かう途中の話である。
 
 なので、義経伝説にありがちな悲壮感はなく、ただただ弁慶の力強さ、豪快さなどが分かる話ではある。
 伝説では那須山で修行とあるが那須岳であろうか。
 調べてみると弁慶は四国や島根あたりで修行して比叡山にいたるという記述はあるのだが那須山で修業したというのは、この伝説くらいである。
 まぁ弁慶なる者は剛力や豪快の象徴だし、全国のどこで修行していてもおかしくはない。
 なんなら那須の弁慶の異名を持つ者がいたのかもしれない。

下駄掛石傍らにある下駄

 実際に訪れてみると下駄に挟まるにしては随分と大きな石だ。
 その脇には通常よりも大きな鉄下駄が置かれているが、それよりも遥に大きい。
 この石は、伝説にあった石でなく、那須の茶臼岳より移転、復元されたものであるというが、それでも、大きさはそれほど変わらないのだろう。

大下駄と下駄掛石

 伝説では弁慶の言葉に大笑いしたとあることから、剛力譚というよりもホラ話に近いだろう。
 冒頭にもあるように、幕府から追われた義経一行でなく、これから活躍をする希望にあふれた状態でのホラ話であるので、底抜けに明るく感じる。

下駄掛石 近影

 それゆえにまた、弁慶の今後の行く末を考えると、少し切なくなる話だ。
 

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武@ニイガタ
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