【ふしぎ旅】大竜寺の白狐
新潟県村上市に伝わる話である。
大龍寺は、瀬波温泉街とは少し離れた、昔ながらの街並みの中にある。
温泉旅館が立ち並ぶ前は、こちらがメインの街だったのであろう。
大龍寺の本堂そのものは、さして、大きくもなく、新しいため、歴史があるとはあまり感じさせないが、境内にある大銀杏が、樹齢三百年ということで、古さを感じさせる。
なんでもこの銀杏にも、龍神様が宿る神木という伝説があるらしい。
歴史を感じさせないと先に記したが、開山は戦国時代、その後、水害のための移転を繰り返し、現在の場所に落ち着いたのが18世紀半ばというから、かなり古い。
格式も高く、越後村上藩、参勤交代の際には、殿様が城での服から道中の服に着替えるのが、この寺だったとか。
とは言え、現在の本堂は新しく、茅葺の屋根でもない。
もちろん、狐などを見ることがない。
そもそも、田舎にいても、あまり野良の狐を見ることは少ない。
狸などに比べると、かなり警戒心が強いため、人前に姿を現すということが珍しいのだ。
なので、この伝説にあるような、人によく慣れている狐というのは珍しい。
そう考えると、この白狐は案外と、妖狐の類なのかもしれない。
そう言えば、大龍寺がある瀬波温泉の始まりは、龍神様が狐に姿を変え、街へ降り、噴湯をつげたという伝説があるので、この狐も、神の使いであったのだろうか。
そんな狐に木を投げつけた職人が狂い死にしたという最後の一行が、あまりにも淡々として、ホラーを感じさせる話である。
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