見出し画像

なぜ人は独裁者となってしまうのかのリアルを描いた名作!「栄光のナポレオン」を読んで

すみません、謝らせてください。今まで読まず嫌いしてました。

あの、ベルバラのイメージって少女漫画でした。綺麗な男の人と女の人との愛の物語とだけ思ってました。(この作品はベルバラではないですけど、ベルバラを描いた池田先生の作品です。)まあ、愛の物語という側面も確かにありますが、それだけでなく歴史スペクタクルでした。もう圧倒されました。

ナポレオンの26歳から51歳で亡くなるまでの約25年を描きます。多分高校の世界史の教科書なら1ページぐらいの内容でしょう。それを緻密に取材し、12巻の大作にしてしまうのはすごい。

この漫画で感銘を受けた点を順に書いていきたい。

戦争の描き方が素晴らしい

ナポレオンは戦争の天才で、戦争で勝つことで成り上がったといえる。戦争でのシーンを抜きにしてはナポレオンを語れないし、ずっと戦争がつきまとう。(皇帝になっても戦争の指揮を取っていたからね)戦争のシーンをどう描くかが重要なんだけど、これが素晴らしかった。地形がどうとか、どういう陣形を取ったとか、ナポレオンの指示がどうであったのか細かく描いしてます。何十という戦闘シーンをその調子で描いていて、もうすごいとしかいえませんね。

ジョセフィーヌとの双方報われぬ愛

恋愛という面もありますが、結構描き方がシビアです。愛を冷静にみているように思います。
ナポレオンは若い頃ジョセフィーヌという女性に恋をします。恋焦がれる感じです。ジョセフィーヌの方はナポレオンを全然好きではなく、他の男性と浮名を流していきます。しかし、ある時ナポレオンの偉大さに気づき、ナポレオンに対して愛情を持つようになりますが、今度はナポレオンの方が愛に冷めていくという。なんとも皮肉な結果を迎えます。もう少しなんとかならなかったのかと考えさせられてしまった。

革命はそれだけでは全然解決にならないということ

フランス革命により、ルイ16世やマリーアントワネットが処刑され、民主主義が取り戻され、政治的に安定していたものと思っていましたが、そんなことはないんですよ。新たに選任された総裁たちの政治は欲にまみれ、民衆のことは考えず、政治的には全然安定していなかったというような描かれ方をしていて、実は混乱していたというのが分かって、これが一番の発見だったし、ちょっとショックだった。だからこそナポレオンが出てきたんでしょうけど。

人はどうして権力の座に就くと独裁化の道を歩むのかがよく分かる

前にこんな記事を書きました。

日本以外の歴史を見ていくと、紛争が起こっているか、独裁化してとんでもない政治を行っているところばかりで驚きます。独裁の例でいくと、ドイツのヒトラー、ソ連のスターリン、北朝鮮の金正日、カンボジアのポルポトなどです。どうして独裁化していくのかは長年の謎でしたが、ちょっと分かった気がします。

ナポレオンが、ただの若手の将校の頃は理想に燃え、周りも信頼できる部下に囲まれるが、段々と偉くなるにつれ、周りには裏で何をやっているか分からない信用のならない人たちに囲まれ、さらに兄弟たちもどんどん欲にまみれていく。言ってみれば孤独になっていくんですね。そこで、権力基盤を確固たるものにしていくというのは自然な流れなわけですね。

ナポレオンが皇帝となると決まった時に、腹心の部下のアランに裏切られたシーンは切なかった。

日本の外交が下手なのはしょうがないよ。

見ていて、とにかくみんなしたたか。プロイセン、イタリア、オーストリア、イギリス、ロシアといった国々と時には戦争を起こしたり、時には同盟を組んだりする。地続きに同じような力を持った国があって、その時その時の利害関係や政略などから判断してベストな決断をしていかないとたちまち他国に食われてしまう、そういう環境に育つと、外交は上手くなるよね。その一方、島国で他国となんとなく距離が離れている日本の環境では外交が上手くなるはずがない、とそう思うね。しょうがないよ。

よろしければサポートお願いします。サポートいただいた費用は自分の応援する活動の支援に使わせていただきます。