陽キャと陰キャの分断なき、大J-POP時代到来


 最近のJ-POPシーンの風潮は、すごくいいものになっていると感じる。この心地よさは、音楽を聴く層が”分断”されなくなったことに端を発すると私は考えている。



 2000年代以降のJ-POPは、聴く層がはっきりと分断されていた。もちろん細かく見ればその分断は音楽界のあちこちで起こっていたわけだけれど、J-POP業界というワールドマップのど真ん中に、誰もが意識する大きな分断がグランドラインみたいに走っていた。それが、陽キャの音楽と陰キャの音楽だ。

 恥ずかしながら私は、発売して1年くらい経つまで、三代目なんちゃらのR.Y.U.S.E.Iという曲を知らなかった。(もし今の時点で知らないという人がいたら一応言っておくが、一時期めっちゃくちゃ流行ってたらしい。あとMVにオラついた男しか出てなくて笑っちゃう。)たまたま陽キャに囲まれたカラオケに行くことがあり、私が初めて聴くこの曲で、自分以外はめちゃくちゃノっていたので驚いた記憶がある。

 私はまあそこそこ音楽好きなほうで、選り好みせずわりと幅広く聞くタイプだと思っている。R&Bとかジャズとかはあんまり聴かないものの、別に嫌いなわけではないし、良さもわかる。しかし、そんな雑食な私でさえ、この曲を耳にしたことがなかった。それは、まさにこの曲が「陽キャの音楽」であったからにほかならない。



 1980、1990年代の音楽には、こうした断絶は少なかったように思う。宇多田ヒカルやMr.childrenはみんな聴いていたし、陰キャでも浜崎あゆみの曲は知っていた。

 それが2000年以降、はっきりと違う様相を呈し始めた。テレビの持つ求心力が弱まり、音楽を聴くメディアそのものが分化したからだろうが、それぞれ自分が日常耳にする音楽以外は聴くことがなくなった。そして、EXILEはテレビのものに、ナンバーガールはライブハウスのものに、ボーカロイドはインターネットのものになっていった。自分の興味が向かない音楽は、簡単にシャットアウトできる。そうした潮流が、前述の分断を生み出したのだろう。

 だいたいここまででお分かりだと思うが、私はゴリゴリの陰キャだ。だから、00年代・10年代の、テレビで流れているようなヒット曲をほとんど知らない。正直嵐の曲とかも3曲くらいしかわからない。



 しかし、はじめにも述べたように、最近の音楽シーンはこうした分断がずいぶんなくなってきた。米津玄師・サカナクション・あいみょん・星野源・Official髭男ism・King Gnu。NiziUとかリトグリなんかは陰キャにも人気があるし、YOASOBIやEVEを聴く陽キャだって多い。一昔前では考えられなかったことが、今日本の音楽シーンには起きている。

 理由はいろいろあると思う。テレビと動画サイトの距離が近くなり、それぞれがそれぞれのフィールドに進出しだしたこと。音楽フェスが大衆化され、バンドサウンドが以前より市民権を得ていること。SNSの発達によって、インターネット文化そのものが広く浸透してきたこと。いずれにしろ、かつて陽キャと陰キャの間にあった大きな海溝が埋まりつつあることは間違いない。



 2020年を契機として、J-POPは新たなフェーズに入った。最後に、私がこの新たなフェーズで活躍すること間違いなしと踏んでいるミュージシャンを1人紹介して終わりにする。10年後のJ-POPを背負うことになるだろう彼に、今後も期待していきたい。


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