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制約を逆手に取るFear, and Loathing in Las Vegas


 Fear, and Loathing in Las Vegasというバンドがある。寄生獣やカイジの曲でおなじみのバンドだ。名前が長すぎるので「なんちゃらラスベガス」などと呼ばれている。あまりにも言われるためか、自分たちの広告看板にもこの俗称を用いていて笑ってしまった。

 彼らの音楽は、実に新しい。そして、聴いたら一発で彼らの曲だとわかる。これはとんでもなく稀有なことだ。音楽のパターンが出尽くしてしまったと言われる昨今、誰でもわかるほどのオリジナリティを出すことは簡単ではない。

 「誰もやっていない新しいこと」で売れるのは実に難しい。ある程度売れようと思ったら、誰かの模倣をするのが賢い。肉親の音楽性を堂々とパクっているバンドだってあるくらいだ(よい子は”森進一 三男”でググるのはやめようね)。私はべつにそれを悪いとは言わない。しかし、やっぱりオリジナルの音楽性で勝負できるミュージシャンは、センスとエネルギーが半端ではないはずだ。



 とはいえ、なんちゃらラスベガスが売れたのには”新しい”以外の理由があるとも私は思っている。彼らの音楽は、サウンドや構成こそ目新しいものの、メロディは非常にベタなのである。けたたましい電子音と重厚なロックサウンドによって奏でられるのは、あくまで王道のコード進行だ。また、そこに乗っかるSO(Vo.)のボーカルもまた、「欲しいところに欲しい音がくる」ことがほとんどで、実にポップミュージック的であるといえる。

 誤解しないでいただきたいのは、”ベタ”とか”王道”とかいうのは、決して批判的な意味で言っているわけではない。むしろ私はこれを高く評価している。そしてこれこそが、当バンドの売れた理由でもある。日本人は、”ベタ”に弱い。



 日本人は、”制約”を強く意識する民族である。我々はいつの時代も、”制約”をうまく利用することで発展を遂げてきた。国土が狭く資源が少ないながらも、資源を輸入・加工することで発展してきたように、芸術分野でも”制約”を逆手にとることが多い。古くは五七五七七という文字数やさまざまの修辞法でルールを縛る和歌から、例えば家庭用ゲームにおけるドット絵によるキャラクター表現なんかもそうだろう。

 とすれば、現代の日本ミュージックシーンにおいては「ベタなメロディでないと売れない」というのが制約なのだ。だからラスベガスはそこの制約は必ず守る。必ず守った上で、サウンドや構成でこれでもかと遊ぶのだ。彼らはセンスがずば抜けているだけでなく、実に頭脳的な曲作りをしているといえるだろう。



 最後に、本筋とは少し離れるが、彼らはMVも凝っているし、ライブパフォーマンスも圧巻だ。表現が難しいのだが、こう・・・普通に見たらめちゃくちゃダサい。いやカッコいい。何を言ってるのかわからないと思うが、MVでも見てみてほしい。あなたもきっと、ダサいとカッコいいの狭間で揺れ動くことになる。世界がもとに戻ったら、ライブにも足を運んでみてほしい。

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