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窓、窓、窓。もっと真剣に考えたい窓のこと。①引き違い窓

窓を考える会社、というキャッチコピーがあります。YKKでしたっけ。
このシリーズでも窓を考えてみようと思います。ですがシリーズと言いながら何回続くのかは神のみぞ知るです。そのシリーズの最初の一回目の初回は引違い窓についてです。最初にネタばらししますが、個人的には引き違い窓を無くしたいです。街を歩いていても引き違い戸に出会うことが大変多いわけですが、全部撲滅したいです。百害あって一理無しとまでは言いませんが、理が3か、4くらいしか無いと思います。引き違い戸、やめましょう。


引き違い窓とは

左右2枚のガラス戸をスライドして開閉する窓。どちら側を開くことも出来、換気・採光に有効です。

参考:引き違い窓とは lixil https://www.lixil.co.jp/reform/yougo/shizai/window/19.htm

窓で引き戸の範囲には、掃き出し窓という、開口部が床まである窓と、片引き戸というFIX窓と引き戸をあわせた窓がありますが、この記事では横にスライドする窓をまとめて引き違い戸とします。正確な用法ではありませんが、了承してこの先を読んでください。

引き違い戸を撲滅したい理由その1 そもそも高性能にしにくい

家の断熱が重要だと言われるようになってからずいぶん経ちます。断熱するときに熱の出入りが大きいのが窓、ということも認識されるようになりました。そこでペアガラス、トリプルガラス、あるいは樹脂サッシなどと性能が出る窓が登場してきたわけですが、いくら窓ガラスとサッシの性能を上げても、取り付けるときにしっかりと施工しても、窓の構造によって気密性に大きな差があります。構造上もっとも気密性を保ちにくいのが引き違い窓です。
構造を考えても、引き違い戸のレールの部分ってどうやっても気密性が上がらない気がします。というか、実際に気密性が悪いのはレールがあるためです。レール部分には窓側からは戸車が当たります。レールに窓のサッシ部分が当たっていたら、引きずるようになって開閉がスムーズではなくなりますから、少し浮かせるわけです。下もそうなら上も同じです。ただレールに沿わせるだけではやはり窓枠と窓の摩擦が大きいですから、そこにもわずかに隙間が空くようにしてあります。左右と二枚の窓の合わせ目はパッキンにしっかり当たるとしても、どうしてもレールによる気密性低下は免れません。
ではほかの構造の窓は、と言いますと。四辺をゴムパッキンで完全に固定するFIX窓が最も気密性を保てるのは当たり前として、滑り出し窓と上げ下げ窓は、閉め切ったときに四辺がパッキンに押し付けるような形で納まります。なのでFIX窓ほどではないですが気密性が高いです(上げ下げ窓よりも滑り出し窓のほうがやや高い)。
現代の快適な家は、やはり気密性を求めずしては実現しないと思います。引き違い窓はできるだけ採用しないほうが良さそうです。

掃除したくない

窓ガラスの掃除は、FIXでも滑り出しでも上げ下げでも、もちろん引き違いでも同じ手間です。
しかし、サッシそのものの掃除となると、手間が大きく変わってきます。
ではlixilのサイトより引用します。

「レールにたまった汚れは、そのままにしておくと、サッシ戸の滑りが悪くなったり、鍵がかかりにくくなったりする原因にな」るそうです。なので掃除をしてくださいと言っています。
「掃除機の先の尖ったノズルでレールにたまったホコリなどを吸い取ります」「塗装用の刷毛で掃き出したり、空の霧吹きで吹き飛ばしたりするのもひとつの方法」けっこう面倒くさそうじゃないですか? そしてさらにこう続きます。
「レールにこびりついた汚れは、割り箸や使い古しの歯ブラシ、マイナスドライバーなどに布を巻き、汚れをこすりつけるようにすると、きれいになります」これははっきり言って面倒くさいです。おそらく、多くの方がこれをやったことがあると思うのですが、いよいよ面倒になると放置してしまい、その汚れは固着し、もはや掃除する気が一生起こらないという放置サッシになってしまうこともあるでしょう。
FIX窓は内側とサッシの掃除が最も楽である代わりに、外から拭くということが、特に二階など高所の場合には難易度が上がります。
滑り出し窓と上げ下げ窓は、工夫すると外側からも(高所の場合、危険なこともあるので気を付けてくださいね)拭くことができますし、上げ下げ窓ですら引き違い窓よりもはるかに掃除しやすく、滑り出し窓はとても掃除が簡単です。
ロボット掃除機が家じゅうを掃除し終わるまでに引き違い窓のレール掃除が終わらずに悪戦苦闘、なんてとても現代的だとは思えませんね。

その掃き出し窓は人以外を掃き出しますか?

掃き出し窓というのは足元から立ち上がる大きな窓で、引き違い窓と言えばイメージするのはこれじゃないでしょうか。一般的にはリビングルームの窓でおなじみです。
さて、その掃き出し窓ですが、もはや現代の住宅にお住まいの方に、箒で床を掃いて、掃き出し窓から庭に掃き出すという人はいないと思います。では掃き出し窓は何を掃き出すかと言えば、ほぼ人です。庭に出入りするため(掃き出し窓に面してウッドデッキがあったりする家も多いですね)、人が掃き出されます。
では、人が出入りするために本当に掃き出し窓が必要なんでしょうか。ドアからではだめなんでしょうか。リビングの窓が掃き出し窓サイズである必要性があるのでしょうか。
現代の家では、風を通すために工夫をした昔のような生活ができないようになってしまいました。そもそも気密性を上げるために様々な対策を講じているわけですから、春や秋でも常時窓を開放するということは無いでしょう。24時間換気が付いていますから、なおさら「風を通す」ということが無くなっていると思います。もちろん昔と違い防犯面でも、大きな窓から中を丸見えにしておくわけにはいかず、ほとんどカーテンを引いておく、あるいはシャッターを下げておくなど気を遣います。また生活スタイルも完全に椅子に座る前提になっていますので窓の位置が高めでも良いはずなのです。
そんな中で、採光と断熱という、ある面では相反する重大な二つの要素を両立しなければならない窓ですから、さらに「めったに人が出入りしない大きな窓を引き違いにしておく」という要素を加えることはさほど重要ではないと思います。
その掃き出し窓は現代の暮らしをつくるのに、本当に必要ですか?

これが一番重要ですが、外観に難あり

美やデザインの好みは人それぞれなので、これは個人的な意見と言ってもいいと思いますが、それでも検索すると、このような意見が本当に多いので、やはり引き違い窓はデザイン的に避けたほうが良いのではないかな、と思います。
個人的な意見としては、引き違い窓を廃止すればそれだけで家は何割増しにもかっこよく素敵に美しくなると思っています。
引き違い戸のデザイン上の最も大きな欠点は、窓単体で左右対称にならない(両片引きを除く)ところです。
FIX窓はもちろん上げ下げ窓も、縦滑り出し窓ですら、外から見たら(ハンドルがあるにしても中から見ても)左右対称です。二枚並べたときにも、見た目の納まりがいいです。
ところが引き違い窓ときたら。一枚の引き違い窓を見ても左右で奥行きが違う(互い違いになるため)のに、二枚並べると、奥手前奥手前という並びになるんです。あるいは、角を挟んで二枚ある場合に、角に近いほうが奥と手前になるんです。とても座りが悪いです。
もうひとつ、サッシそのものが目立つという問題です。引き違い戸は構造上、ひとつの開口部の真ん中に、縦に大きな枠があります(片引きはこの限りではない)。これがデザイン上、非常に悪目立ちします。上げ下げ窓に多い飾り格子とは違い、でーんと真ん中に太いサッシがあります。掃き出し窓のようにサイズが大きい窓の場合には、真ん中の枠の太さが本当に目立ちます。そしてこの枠でセパレートされた左と右の窓は、奥行きが違うために、二枚きちんと並んでいる感がしなくなるわけです。
上げ下げ窓は上下の中央に太い枠が入りますが、意匠として伝統的ですし、なぜかオシャレに見えます。それに対し、引き違い窓の真ん中の太い枠はどうしてもオシャレには見えません。やはりこの原因は左右対称になっていないことに尽きると思います。

まとめると

まず気密性が下がるので機能的に使いたくないです。
次に慣習的に掃き出し窓とか付けるのを再考しましょう。たぶん要らないです。
最後にデザイン性を損なうのでやめましょう。

最後のデザイン性なんですけど、本当に家を見るたびに「この引き違い窓をFIXにしたらかっこよかった」「この引き違い窓を滑り出し(以下略」となります。掃除は週に一度かも知れませんが、外に出るたびに家を見ることになります。その都度「ああ素敵なデザインだ」と思うか「こんなもんだろ」と思うかの違いは大きいです。引き違い窓でも、できた家のデザインが破綻しているとかダメだとかではないです。しかしその引き違い窓がすべてFIX窓や滑り出し窓、上げ下げ窓に置き換わっていたら。より素晴らしい外観になるということです。その外観のため(外観を見てうっとりする自分や家族のため)に、引き違い窓を不採用にする意義は十分にあると思います。

ちょっとだけ補足

ただし、最も安価なのが引き違い窓です。

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