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マフィンのレシピができるまで

以前の投稿で、店を始めようと思ったきっかけについて書きましたが、今日はマフィンの生地ができるまでの話を。

ふだん「どうやって味の組み合わせを考えているのか?」と質問していただきますが、
ある一つの食材を主役に、こんな味がいいなという着地点のイメージが浮かんだところから、それを構成する仲間たち(他の食材やスパイスやハーブ)を決めていくという流れがベースにあります。

最初に考えたマフィンの生地に関してもそうで、
店を始めようと思った4年前、作るならこんなマフィンにしたいというイメージがまず先に浮かびました。そのイメージを要素分解すると、

①噛みごたえがあり、食感はふんわりよりはどっしりしている

②重たくなく、でもお腹に溜まる

③頑丈である

④大きい

⑤翌日以降も風味が劣化しない(しっとり、パサつかない)

こと。

①は、以前書いた通り私が「食事」としてマフィンを楽しみたかったことから。ふんわり軽やかよりはずっしり食べごたえのある生地のマフィンを欲していました。

②も同様の理由から。加えて、食べた後に罪悪感の残るような胃もたれ系の満腹ではない、軽やかだけど満ち足りた食後感のマフィンにしたいなと思っていました。

③の頑丈とは?と思う方もいると思うのですが、これが結構大事なポイント。
焼き菓子って出先で買うことが多かったり、好きな方なら焼き菓子屋ハシゴの一件として立ち寄る方もいると思うのですが、ふんわり繊細な生地感だと持ち帰る間に潰れてしまうことがよくあったんです。

バッグの一番上に乗せて、潰れないよう慎重に持ち歩くのは、それこそ洋菓子を持ち帰るときのような緊張感を伴う。
けれど本来のマフィンやスコーンってもっとカジュアルなもののはずだから、気楽に買ってガサっとカバンに入れて、1日気にせず持ち歩き、思い立ったらとりだしてそのまま食べる。そんなおにぎりみたいなラフな携行食が作りたいと思っていました。

なので、外側はザクっと頑丈な硬さがあり、中はしっとり柔らかいマフィンが理想でした。

④も私にとっては大事なポイント。小さい焼き菓子だと、ひとつ食べるかふたつ食べるか迷いませんか?
ふたつ食べるって微妙に罪悪感がある。でも、ひとつだと足りない。よく焼き菓子を食べるとき、そんな気持ちになっていました。
それならひとつで満足できるマフィンの方が、気持ちもお腹も満足できるなと。自分が作るなら「ふたつ食べようかな」とは思わないくらいひとつで満足感のある大きさにしたかった。

そして最後は、勝った翌日、たとえ温め直さなくてもおいしく食べられること。前述のとおり焼き菓子の魅力って食べるシーンを選ばないカジュアルさにあると思うので、リベイクマストなマフィン にはしたくなかった。これもおにぎりのイメージに近いのですが、出来立てでも時間が経っても、別のおいしさがあるようなものにしたかったのです。

これら5つを満たして、かつおいしいマフィンに当時はあまり出会えず…これを目指しての試作がはじまりました。

バターを使いたくなかったので、油はオイルで。
するとどうしても、悪い意味で「オイルらしい」(食べごたえと風味が物足りない)仕上がりになり、かつ食感がぱさぱさしがちなので、どうしたらどっしり、しっとり、翌日でも損なわない美味しさのある生地に仕上がるかを考え、牛乳よりは豆乳を使うレシピに落ち着きました。

じつは豆乳の扱い方がdoyoubiのマフィンは独特で、そこに生地感のポイントがあると思っているのですが、
それゆえ時間が経ってもしっとりし、噛めば噛むほど旨味のある生地になったと自負しています。

試作期間中は毎日毎日マフィンを焼き、かつ焼いたものを翌日までラップをせずにそのまま放置。24時間経った頃に食べてみて、それでおいしいと思えるか、パサついてないか?を基準に試食と施策を繰り返していました。(今思えばラップせず放置されていたマフィンたちの可哀想なこと。笑)

でも、そんな試行錯誤を経ていまのマフィンが完成しました。

ベースの生地は小麦粉、豆乳、米油、砂糖、レモン汁のみ。原材料を見て頂くと驚くほどシンプルだと思いますが、
混ぜる順番と混ぜ方に個性があります。

食感はどっしりしていて、私は温めずに食べるのが好みです。
スタバのスコーンを温め直さないで食べたい方、冷めたおにぎりが好きな方なら温め直さずにぜひ食べてもらいたいなと思います。

常温で食べた時のみっしりした生地感と、咀嚼してもパサつかない適度な水分量、そして頬張った時に幸福感にあふれるようなちょうどいいコクと軽やかさ。
このふたつは一見対照的ですが、意外と両立するものなのだと、自分のマフィンを食べていると感じます。

甘みや脂っこさのないニュートラルな味わいだからか、妊娠中、悪阻時期に甘いものを一切受け付けなくなった時も、自分のマフィンだけは不思議と食べることができました。

おいしさの価値観は人それぞれなので、自分のマフィンが口に合う方ばかりではないだろうと思っていますが、自分にとっては、他のどこかの焼き菓子を食べても必ずまた戻りたくなる味。強い個性はないけれど、存在感がある、そんなマフィンだと思っています。

どこかで修行をしたわけでもないので、技術的には他の店のマフィンと比べて邪道な作り方だと思っていますが、
人一倍理想の食感や味のイメージが強かった当時の私が作った、今も納得できるレシピです。

この生地があるから、今の具材の組み合わせがあるのだとつくづく思うのですが、そんな組み合わせの変わったマフィンを作り始めた経緯についてはまた改めて。

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