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サイケデリックドラッグバウンティハンター

ベン・アフレック主演じゃない方のドミノを観る。

ドラッギーでサイケな画面の色彩に、ノーランばりに無駄に時系列を入れ替えて複雑にした脚本、フェードを多用しまくる編集、要所要所で挟まれるゴッドファーザーみたいなギラギラした下向きの照明と、全てが過剰になるよう設計されている。その過剰な演出が極まりない領域にまで達しており、もはやバカバカしさを超越してアートに足を突っ込んでいるところも素晴らしい。

現代的な、いわゆるカチャカチャカット切り替えをもっと早めて、極限まで画面の情報量を増やすとこうなる、といった感じの映画だ。同年に二代目ブラッカイマー門下生ことマイケル・ベイが撮った映画がアイランドだったことを考えると、初代ブラッカイマー門下生たるトニー・スコットは比較にならないくらいに前衛的である。

そのマイケル・ベイといえば、6アンダーグラウンドを観た時に、変なタイミングで、人名やテロップ出すなあ、と思ったものだが、この映画も常時そんな感じなので、ひょっとしたら参考にしたまである。かっこよければ無駄な演出を取り入れても良いという思想はここからだったのやもしれぬ。というわけでトニー・スコットはマイケル・ベイと同じく、アルチザンのフリをしたアーティストという、世渡り上手な人だということがよくわかったのであった。

主演のキーラ・ナイトレイもカッコよい。ひたすらクールビューティといった感じで、セクシーな見た目のくせして全然エロくないのが個人的に好きだった。こんなカッコよく撮ってもらって嬉しかったろうなあ。

Y2K映画な事もあってマジョリティ向けかと思いきや、以外にも格差問題をそこはかとなく滲ませた作風になっており、911から4年後にもかかわらず、最後に金がアフガニスタンに流れる事を考えると、やはりトニー・スコットは世間の風見鶏をした流行作家などではなく、きちんと芯を持った人だということが伺える。ここら辺はマイケル・ベイのペインアンドゲインに通ずるところがある。

優れたエンタメとは決して一辺倒なものの見方だけでは実現出来ないのだ。


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