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ベネデッタちゃん

ベネデッタを観る。
調べるとどうもこれ、『ナンスプロイテーション』という敬虔な修道女がえっちなことするというジャンルに該当するそうだ。
女性同士の濃密な関係を百合と定義するなら、これは俺の理想とする百合である。二人で絡み合ってるのに全然欲情とかできなかった。『尊い』という言葉は軽薄なので使いたくないが、まあ好きな関係と言っていい。素晴らしいね。
「神だなんだと抜かしても人間は所詮金とセックスが大好きなんだろ」というヴァーホーベンのシニカルな態度と「どんな美女であろうと脱糞はするよね」という明け透けな人間描写は相変わらずである。ロボコップ観た時、「この人は本当に人間の汚い部分を直球で描くなぁ」と思ったものだが、いざ現実を振り返ってみると実際我々も嘘をつくし排泄してるわけだから本来は案外こういう人間描写が正確であったりする(だからといってそういう汚ねえものを積極的に見たいわけではないけどさ)。なので別に映画だからといって特に人間の姿を美化する必要などないのだった。
俺は成功からの凋落を扱ったクライムアクション映画とかが苦手だ。どうせ逮捕される結末がわかっているので本当に辛い。同様に、この映画もそういう意味でかなり辛かった。ベネデッタは幸せになろうとしただけなのに、こういうあれこれを理不尽に奪われてしまうのはなんかこう……心にくる。
だがそれでもベネデッタ、バルトロメア、修道院長、それぞれの前向きで強かな生き様は、タンスの角に足の小指をぶつけただけで世を呪ってる程度の俺からすればとても真似できないものがある。特に「どんな屈辱に塗れても生きてさえすればなんとでもなる」というバルトロメアの生き方はとても眩しい。
人間の姿が美化されていないだけに、そうした芯を失わずに生きていく強さが翻って人間賛歌になっているのは本当に素晴らしい。これはちょっと感動した。
基本的に神や信仰というものを権力の道具としてしか捉えていない奴らばかりの中、ベネデッタだけは割と本気で神を信じていそうなのがなんとも皮肉なのだった。
観る前は上映時間のこともあって「ちょっと辛くなるかな?」などと考えていたが、サスペンスあり、クソ野郎をボコボコにするクライマックスありと、王道なエンタメをしていた。
さすがヴァーホーベン先生といったところか。米寿が近い巨匠の称号が相応しい年齢のくせしてこんなアグレッシブで面白い映画撮れるのは本当にすごいと思う。弟子にしてほしい。
にしてもマリア像の張形か。売ってるのかしら?いや、自分で木彫りの像買って作ればいいのか。いらないけど。

これ、劇場で観たかったな。

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