サマーの500日
「ねぇ何聴いてるの?」
ぼくは無言で彼女のインプラントを探り当て、音楽をペアリングする。
彼女はしばらく耳を押さえていたがやがて合点がいったらしく、
「あーこれかぁ。わたしも好きだよ、Coldplay」
「え?」
「Coldplay」
「……」
Don’t leave me high、と彼女は知っていることを誇示するかのようにサビを歌い上げてみせた。
「Radiohead」
「え?」
「Radiohead」
ぼくは一文字ずつ区切るようにもう一度言った。
「あれ、そう言わなかったっけ」
「言ってないですね」
「うそだぁ」
ぼくは無言でペアリングを切る。
というかお前は誰だ。
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