サボる話
最後の大会をサボった。理由は特にない。
二歳の時から人型機動骨格競技「RBT」を始めてはや十六年。中学二年生の時に全国大会の頂に登り詰め、次は世界大会制覇だと意気込んでみたは良いものの、古来から上には上がいると言われるように、世界の壁を目の当たりにして人生初の挫折を味わって帰国した頃には受験期に差し掛かっていた。足掛け二年のブランクを経て、高校をスポーツ推薦で入学し、再び再起を図ったところで人生二度目の挫折が訪れた。簡単に言うとやる気が失せた。
何故かはわからない。駆け出した足がある日唐突に動かなくなって、操縦桿を握る手が重いな、と自覚し始めたところでもう止め処なくなった。それからは部活に顔を出したり出さなかったり。かつて後輩達から注がれた羨望の眼差しもすっかり冷え切り、部内のお荷物となった自分を自覚するばかり。退部しなかったのは一重にスポーツ推薦による入学だったからで、顧問にもいくばかりか恩があったからである。
それでも最後の大会に出る気はなかった。単純に土日は休むものだと思ってい、早朝の集合時間に合わせて早起きするのが面倒くさかった。一度は断ったが、どうしてもという顧問の泣き言に煩わされ、仕方なく出場すると答えた次第だった。
だがいざ当日になってみれば、体調不良を理由に寝床で端末をいじりながら、引っ切りなしにかかってくる顧問からの電話や、友人からの身を案ずる連絡をいなしていたりする。顧問の怒りは大きかったが知ったことかと思った。元よりこちらは予定の範疇である。
しばらく端末をいじっていたがやがてやることもやることもなくなり、朝食を入れてない空きっ腹と画面の見過ぎで疲れた目だけがわだかまった。
面倒くさい。
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