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重川俊
2021年10月28日 23:31
生意気な貴族を殺したら遺族に恨まれ司法局の執殺官に追われてネロウの都を散々に逃げ回った挙句密業者に依頼してドゥリムン川を渡って国境を抜けようと試みたところで裏切りに遭い遂に命運尽きて年貢の納め時と相成った。「オレは悪くない。悪いのはあいつだ」 逮捕時に愚痴ったのはそんな台詞である。当然聞く耳を持たない執殺官は紫苑を司法局の暗い石牢に鎖で縛りつけた。そして遺族の意向いかんによっては拷問をくわえ
2021年10月17日 01:43
シャンヨンと出会った時、殺してやると罵られたことをよく覚えている。 いまとなっては考えにくいことだけど、当時のぼくと彼女は犬猿の仲だった。ぼくはそんなつもりはなかったけどもシャンヨンはどうにもぼくが憎くて仕方がなかったらしい。 あれはそう、十二年ほど前のことだ。ぼくと彼女は互いの両親の面会の際に引き合わされた。ちょうどぼくの父ヒヴォンが近隣諸国を制圧し、盤州の一地方に覇権を敷いた頃だった。父
2021年10月9日 15:59
斜陽高校校内は物々しい雰囲気に包まれていた。 校舎から錆鎖で吊るされた死骸を鴉共が啄み、血絵具で彩られた壁面に蠅がたかり、校庭に積み上げられた机椅子と死骸が燃やされ、大きな篝火を上げている。 同様に、裸に剥かれて股から口までを鉄骨に貫かれた上に四肢を捥がれた死体が無数に燃やされて地に突き立っていた。「手前らの中に俺の蛮器を盗んだ奴がいる。名乗り出ろ」 裸のまま横一列に並ばされた十名の男女