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企業が存在価値を出す方法は、実は2つしかない

資本主義の基本は、何らかの「商品」を世に出して、それが多数の人に受け入れられたらお金がたくさんもらえるし、見向きもされないものを作る者は淘汰されていくというシンプルなシステムですね。
 
じゃあどうやったら多数の人に受け入れられるものが作れるのか?というと、基本的には誰かに対して、

・「楽しいことを提供する」
・「面倒やいやなことを取り除く」

の2種類しかない、

と勝手に提唱したいと思います。

思考実験みたいな話ですが、何かのヒントになれば幸いです。

2つの存在価値の出し方と実例


本題に入る前に、まずは「楽しいことを提供する企業」と「面倒やいやなことを取り除く企業」の例を考えて見ましょう。
 
それぞれ長ったらしいので、ニックネームをつけましょうか。前者はAmusementの頭文字で「A型企業」、後者はTroubleshootingから「T型企業」とでもしておきましょう。
 
前者はわかりやすいですかね。
 
例えば、オリエンタルランド(ディズニーランド)やUniversal Studioといった会社はその最たる例です。また、Facebook, Twitterなどといった企業もどちらかというとこのグループでしょう。
 
対して、後者の企業はどうでしょうか。

実はこちらのほうが裾野が広いのかもしれませんが、例えば証券会社。株式のやり取りを個人同士で行ったりするのは恐ろしく手間です。それをやってあげることが彼らのビジネスですよね。
 
金融はだいたいこのカテゴリーでしょう。保険会社はもっとわかりやすいかもしれません。事故というとてつもなくめんどくさいことが起きたときに、我々のために解決のサポートをして、最後にはお金を払ってくれますね。
 
あとは、監査法人とか製薬会社、警備会社などもこのカテゴリーでしょうか。いっぱいありすぎるので、個別の社名は出しません笑。
 
当然ながら、すべての企業がくっきりA型とT型に分けられるものでもありません。
 
例えば、居酒屋はどうでしょう。おいしいものを食べる楽しみや、仲間と集まってワイワイ楽しく過ごす時間を提供しているという点ではA型企業ですが、食事をつくる手間を省いているという観点にたてばT型企業とも言えます。
 
鉄道会社やバス会社もそう。

移動の時間を減らし、楽に人間をある地点から別の地点に運ぶ、という機能にフォーカスすればT型企業ですが、移動そのものを楽しむという観点に立てば立派なA型企業です。
 
同じ会社の中でも、A型の部署とT型の部署があったりもしますしね。  

企業の発展は、T型からA型へ


さて、ここまででA型企業とT型企業のイメージはわきましたでしょうか。
 
歴史を紐解いていくと、企業はもともとすべてT型だったと言えるでしょう。
 
産業革命以降、それまでは人間の力に頼りきりだった様々な作業を機械が取って代わるようになりました。力織機しかり、蒸気機関しかり。
 
その結果、人間の面倒や手間は著しく減少したわけですね。
 
T型企業が世の中に増えてきて、手間や面倒を省く手段がいきわたるようになると、T型企業がもっている技術やサービスを何か別のことに応用できないか、と考える人が出てくるようになります。これがA型企業の始まりです。
 
たとえば、火薬の発明により、人間の力で壊せないような大きな岩を砕いたり穴を掘ったりするのが容易になりました。

ところが、爆発そのものが見せる一瞬の美しさや、火薬の混ぜ方を変えると異なった色の火花が散ることに気づいた人がいます。その結果、花火を作る会社が生まれました。
 
こうして生まれたA型企業は、T型企業の発展を踏み台にしてさらに成長します。上の例で言えば、火薬や発破技術の進歩が、仕掛け花火や発色の豊かな新しい花火の開発につながり、より多くの人を魅了するようになっていったという次第です。

 企業の成長と衰退が起こる原因もこれで説明できる?


こう考えていくと、近年の日本企業の衰退ぶりも説明できそうな気がします。

戦後の日本の経済発展と、バブル崩壊後の不景気には当然様々な要因もありますが、個人的には「A型企業としての価値を出せなくなった」ことが衰退の引き金となってしまったのではないかと考えています。
 
これまたよくある例で恐縮ですが、戦後日本が経済成長していく中でHONDAやSONYといった世界的に有名になる企業が出てきました。
 
こうした会社が何をもたらしたかというと、単に家電や自動車を作ったということではないのです。HONDAは「カッコイイ車で走る喜び」を提供しましたし、SONYはウォークマンで「音楽を家の外に持ち出せる」という新たな楽しみを世に送り出しました。
 
これらはみな、T型からA型企業へのスムーズな移行を果たした企業と言えるでしょう。

ところが、世界各国、とくに発展途上国が同じような商品を安く作るようになり、競争が激しくなるとA型企業も雲行きが怪しくなってきます。

結果、本来であれば新たな「楽しいこと」を探すべきだったのに足が止まってしまい、そのまま価格競争に巻き込まれて沈没・・・というケースがままあります。
 
よく、日本のものづくりが衰退してきている・・・、とか、日本企業にはイノベーションが足りない・・・みたいな話がありますが、技術水準そのものではなくて、こうしたA型企業としての立ち位置を見失なってきていることのほうが大きな問題なのではないかという気がします。
 
というか、むしろ技術のほうにばかり特化していると、どんどんT型のほうに戻っていってしまうのではないかという危惧すらあります。
(技術がなくてもいい、ということではありませんよ!)
 

T型特化の企業はもっとしんどい


企業、あるいは産業としての立ち位置の関係上、T型にしかなれない企業は非常にしんどいものがあります。
 
テクノロジーはどんどん進んでいきますから、それに従ってある事象に対する手間や面倒は劇的に減っていきます。ということは、T型企業はずっと最先端の技術を使って価値を提供しつづけなければならず、またその価値はあっという間にコモディティ化してしまいます。
 
最近ではよく「フィンテック」という言葉が出てきますが、これこそT型専門の業態である金融に起きるべくして起きた事象だといえるでしょう。
 
残念ながら、もはや金融業が金融業であるためにはこのフィンテックへの適応という競争に勝ち続けるしかないという、尾崎豊の歌みたいな話になりつつあります笑
 
保険会社とか製薬会社もつらいでしょうね。
 
事故があったらいつもより1億円よけいにもらえる自動車保険なんて作っても、「不謹慎だ!」って言われて大炎上するでしょうし、製薬会社に至っては「飲むと幸せな気分になれる薬」なんて作ろうもんなら「ダメ、ゼッタイ」となること間違いなしです笑
 

T型企業がA型企業に変わるためにできることは?


 テクノロジーが詰まるところ人間の手間や面倒を省くために進化していくものである以上、T型企業に留まっているといつかは限界がきます。
 
なので、どこかでA型企業への転換を図るか、それができないまでも何らかの手段でA型企業としての価値を提供する方向に舵を切らないといけません。
 
あくまでひとつの例ですが、マンション管理会社というのは典型的なT型企業だと考えられます。
 
居住者がやらなければいけない、掃除やらゴミの管理、電球の交換といったことを引き受けているからです。
 
しかし、そのマンション管理会社が管理しているマンションの居住者向けに、バーベキューパーティを開催したらどうでしょう。
 
もちろん、準備は管理会社が行うので居住者は身ひとつでくればOK。場所もマンションの中庭であれば移動の手間もありません。当然、煙が出たりするので近隣の家庭や1階の住人との調整は必要でしょうが、であれば近くの公園でもいいわけです。
 
そういう風に「このマンションに住んでいること自体が楽しい」という価値を提供することで、このマンション管理会社は同業のT型企業を一歩抜け出し、A型企業に近づくことができるのではないでしょうか。

そういうことが求められている気がします。

 まとめ


長々と書いてきましたが、要は

・企業の価値は「楽しいことを与える」か「面倒・手間を省く」のいずれか。
・前者をA型企業、後者をT型企業という。
・企業はT型からはじまり、そこからA型が生まれてきた。
・T型からA型へのシフトは企業の成長を促すが、それを続けられないと衰退する。
・T型特化の業態は競争が厳しくなるので、どこかでA型の要素を取り込む必要がある。

ということです。

この記事だれ向けなんだろ?という気もしますが笑、なんかそれっぽいこと言ってみたかっただけです・・・。

ではでは。

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