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【ネタバレ】プリンセス・プリンシパル劇場版第1章を、今週末も見に行く。


 プリンセス・プリンシパル劇場版Crown Handler第1章をみました。
 気がついたら公開から1ヶ月が経とうとしていて、最寄りの映画館では公開が終了してしまいました。通算何回見に行ったのかいまいち覚えてないんですが、わかる限りで数えると30回は見たのであろうと思います。今このご時世なのでレイトショーはなく、社会人には平日に観に行く手段がありません。先週から第4週目の特典である生コマフィルムの配布が始まりまして、そろそろ配布も終了してるかもしれません。けれども、どうしても抗えない気持ちがあり、私は今週末も、プリンセス・プリンシパルの映画を見に行きます。

 プリンセス・プリンシパルというアニメに出会ったきっかけは、忘れもしない2017年夏のこと。Twitterで長らく付き合いのある(とはいえ記憶が正しければそれまではそこまで親密だったわけでもない気がする)友人の強い強い勧めでした。もともとアニメをそこまで見るタイプではなかった私は、勧めを受けても「あーハイハイまた今度ね」と言った形でいなしていたように感じます。なによりも夏コミの原稿がやばかったので…。
 その後夏コミも無事に終わり、ようやく一息ついたのでプリンセス・プリンシパルとか言うアニメを見ました。本放送当時はなんと、定期的に振り返り配信とか放映済みのエピソードの無料配信とかをしょっちゅうしていたんですよ、このアニメ。
 それで無事、プリンセス・プリンシパルこと公式略称プリプリにハマったのかと言うと、多分そうでもなくて、そもそも自分はあまりたくさんのものに同時にハマるタイプじゃないので、あー面白いなあ、と思うくらいでした。アンジェとプリンセスの関係がなんとなく尊いし、(百合展開的に)出来が良かったら円盤買ってもいいかなあ、くらいの感じ。

 展開が変わったのは、コミケ後の暇を持て余した結果何気なく検索したら、プリプリの小ネタ考察サイトが出てきたところからだったと思います。散りばめられた小ネタの量がすごい。一番目を引いたのは、2話の最後にアンジェがプリンセスに手渡すメモ。頭のいいスパイたちが和訳したところには「親愛なるアンジェ」から綴られた、寡黙で無愛想、けれどトリッキーな彼女が「最愛のアンジェ」に宛てた、彼女の今に対して贖罪する言葉。そしてその手紙は最後に「シャーロット」と結ばれる。2人は昔に入れ替わっていて、つまりアンジェこそが本物のプリンセスなのだと、2話の時点であんな小さいメモにしたためつつ、それでもそれに言及しない展開。いつのまにか私は、ドロシーやベアトリス、ちせも知らない2人の秘密の、共犯者になっていたのでした。

 TVシリーズ最終話を迎える前は非常に不安でした。なにせそれ以前のキャスト出演のニコニコ生放送で、アンジェ役の今村さんが笑顔で「この中で一人死にます❤️」などと言い放ったからです。いやでもプリプリはそんなことしない、しかし脚本はかつて私の心にひどいトラウマ、コードギアスの血染めのユフィを植え付けた大河内一楼さん。これで誰かが死んだらきっと円盤は全部キャンセルだなあ、と思いながら迎えた最終回では、チーム白鳩は全員生存でしたね。
 ただ、初見の感想は、「え、これで終わり?」でした。ロンドンの壁もノルマンディー公との決着も、ゼルダとの因縁も済んでない、あまつさえアンジェは結局一度もプリンセスをちゃんと名前で呼んでやらなかった!これで終わり?正気か?と言うかアンジェちゃんあんなにメソメソ泣いて若干解釈違いだが??と思いながらも、でもププのアプ(アンジェとプリンセスの百合カップリングの意。私が勝手に呼んでいるだけです)的にはなんとなく尊いからまあいいか、と思いながら、何度か見返しているうちに、しみじみと思いました。

 なるほど、プリンセス・プリンシパルはアンジェとプリンセス二人の関係をもう一度築くために、たったそれだけのために、12話たっぷりとかけた作品なのだな、と。
 2人で一緒に協力して女王になろうねなんて、口先では言っていたけれど、アンジェはきっとずっと、プリンセスを逃がすことを考えていたと思います。(これは妄想ですが、逃した後自分はプリンセスとしてもどって死ぬつもりだったんじゃないでしょうか)プリンセスもプリンセスで、国を変えるためには最終的には自分が死ぬしかないと、そう思っていたとわかります。2人で堂々と一緒にいたい。気持ちも、目指す場所も同じなのに、最初から2人で生きていけるなんて思ってなかった。だからお互いが勝手な無茶をして、そしてすれ違い続けてた。
 それを、ちゃんと、同じ場所に立ってもう一度始めるためだけに、12話分の時間をかけたアニメなのだと感じたのです。言うならきっと、アルビオン王国と共和国の対立だってロンドンの壁だってスチームパンクな世界だって、それを描くための舞台装置でしかないんです。人の感情を描くのだから、その世界の風景は緻密でなければいけない。そう言う作品なんです、プリンセス・プリンシパルというのは。その愚直なまでの、キャラクターに対する真摯さに心が震えるようでした。きちんと最後まで描いて貰わなくてはと、強く強く感じてしまった。そうして、続編制作への戦いが始まったのが、だいたい3年くらい前。

 そこからの紆余曲折は割愛します。主演の今村さんの引退とか、全く表に出てこない進捗とか、サブスプリクションもなく1話すら有料という敷居の高さゆえに知名度がなかなか上がらないもどかしさだとか、ソシャゲのサ終とか、2019年公開という最初の発表をしれっとブッチしたりだとか、ようやく公開日決まったと思ったらコロナ禍による延期とか、正直胃がキリキリしっぱなしでしたがもうそういうのはどうでもいいんです。プリプリは制作にお金をかけすぎるせいでだいたいいつもお金がないので、広報が疎かになるのも仕方ないんです。

 そしてここからが本題。2021年2月11日。長い長い延期を経て、ようやくCrown Handler第1章が公開されました。そう、ここまで全部、前置きだったんです。

 劇場で目の当たりにした劇場版ププ、とにかくとってもプリンセス・プリンシパルでした。プリプリ❤️なんていう可愛らしい略称はどんな心境で決めたんだと思うくらいにシビアな展開。お前なんてもうププだよププ!と言いたくなる。

 プリンセス・プリンシパル劇場版について、何かポジティブな言葉で勧めたい気持ちはあるけれど、この映画は見ても一ミリもポジティブな気持ちになれません。本編の最後の方で、ちせがぽつりと「なんだかすっきりしない幕引きじゃのう」とつぶやきます。本当にそう、まさにそれ。泣けるわけでも笑えるわけでも、元気になれるわけでもない。だから感想については、こういうしかないんです。「とってもプリンセス・プリンシパルだった」。

 ププのアプ大好きな私としては、とにかくもうプリンセスのお嫁さん感がやばい。TVシリーズではロイヤルなじゃじゃ馬彼女だったプリンセスが、ひたすらアンジェを支える役に徹しているのが尊い。思えばTVシリーズ第11話で、プリンセスはアンジェに別れを告げる前にこう懇願していました。「だからお願いシャーロット、私にも何かできることがあるはずよ。」それはプリンセスの、本心からの心の叫びだったんじゃないでしょうか。TVシリーズ中はどちらかというといつも涼しい顔をして、とっぴなことを言い出してはアンジェを困らせていた、そんなプリンセスが、本当は余裕なんて全然なくて、いつもいつも「お願いシャーロット」と心の中で泣き叫んでいたとしたなら?その答えを、この劇場版で「プリンセス、手を貸してくれる?」と問われてノータイムで「ええ!」と返すあの笑顔から得られた、そんな気がしました。プリンセスってアンジェのことが大好きなんだなあ……………………え、めっちゃかわいい………めっちゃ可愛くない………?なにそれ………… なんか、ププのアプが本当の意味で2人、隣り合って同じ場所に立っている、そんな気がした。尊いにも程がある。かわいい。ププのアプってもう結婚したんじゃないか?だって指輪も出てたし…もはや伴侶でしょこれ

 その結果のアンジェからのお願いが「自分が離宮で時間を稼ぐからプリンセスはその間に侍従長の部屋に忍び込んで二重スパイの証拠見つけてきてオナシャス」なのはかなり無茶振りだなあと思いましたが、反面アンジェからの信頼も感じて良き…と思いました。1人の時にはビビりながら潜入してるプリンセスもかわいいと思いましたし、その後の車の中での会話もその場にベアトリスもいるのに2人の世界作り上げててかわいかった…しかもその雰囲気にベアトが完全に慣れてしまっているように感じるので、もしかしたらベアトリスの前だといつもそんな感じなのかもしれません。ベアトの前だと素になっちゃうほど安心しちゃってるんだなあかわいいなあとてもかわいい。

 白鳩の雰囲気も以前より信頼が増したことが伺える感じでしたね!冒頭から、超貴重品のCボールをちせに渡してるところがまず信頼〜!って感じでしたしアンジェとちせの任務中のアイコンタクトは言わずもがな、そしてドロシーですよ!ドロシーもこれまでいえなかっただけで、背追い込みがちなアンジェのことをずっと気にかけていたんだろうなあ。ずっとずっと、手を貸したいと思っていたんだろうなあ、と感じずにはいられない、「なんにせよアンジェがまた抱え込まずに済んで良かったよ」でしたね…それと、発言としてだけではなくて、今回はアンジェとドロシーのファーム出身組の連携がとても光っていたように感じました!ブック・サイファのあたりとか、プリンセス・ベアト・ちせの3人には一から説明しなければわからない部分も、アンジェとドロシーの間では暗黙の了解でことが進んでいて、この2人プロだ…と感じずにはいられませんでした。

 そしてそう、この劇場版、小ネタを探して考察するのがあまりにも楽しい!!画面の随所に小ネタが散りばめられているのはプリンセス・プリンシパルならではと思うんですが、例えば離宮でのチェスのシーンに、ウィンストンを殺害する男が写ってたりだとか、新聞係のチャールズにお使いを頼む時に明らかに眼光の鋭い女性が奥にいたりだとか、それらは意識せずとも物語の把握にはさほど影響しないけれど、考えてみるとそれぞれにきちんと意味があって、それに気づけたときの感動がすごいです…!今回、スパイの仲間たちの皆さんに協力していただいて、GoogleスプレッドシートにまとめながらDiscordチャットでやんややんやしてたのですが、自分1人では気がつけない部分もみんなの知恵を合わせると見えてくるところもあり、とても楽しかったです!!実際、何回も何回も見に行ってしまった理由には、誰かが何か新しいことを発見して、それは自分でも確認してみたい!と強く思ってしまったからでした。

 他の人がこの映画を見て、わたしと同じような感想を抱くかはわからないし、もうそういったこともどうでも良くなりつつあります。実際、初日に劇場で見た時は、プリンセス・プリンシパルの続編がこの世に出たこと、そしてそれを目の当たりにできたことに対する感情があまりにも大きく、誰とも話したいと思えませんでしたし、言ってしまえば誰の声も聞きたくなかった。胸の中でしみじみと噛み締めていたかった。そう感じる人は少なくなかったと、体感では感じています。実際みんな何もいえなくなってた。私も5回ぐらいみるまではそうでした。
 この作品を、感動した!とか、泣けた!とかそういう言葉で勧めるのはとても難しいなと思います。実際、見終わった後の気持ちとしてはお通夜みたいな感じなので……でも、本当に本当に、この作品は何度見ても面白いのです。見れば見るほど細かい部分に気がついて、その緻密さに感動してしまう。一回で人の心を動かすような作品ではないかもしれないけれど、何回も何回も見た人間の心にそっと染み入ってくるものが確かにあると思うのです。
 ところで今回死ぬおじさん、毎回毎回死なないで……と思うんですけど、冷静になって考えるとあの人自らのスリルのためにスパイになってそれで全てを失ってつかれちゃったから逃げちゃお!って状況なんでだいぶクレイジーな人ですよね、アンジェちゃんの気持ちを考えると辛いですが残念ながら当然の最期と言えなくもない。でもあの人は…アンジェとプリンセスの結婚式で牧師をしてくれるかもしれない人だったんだ…なんて悲しい…どうしてこうなった…今回の円盤にもオーディオコメンタリーはありますよね??白鳩のみんなの反応が楽しみで仕方ない…

 プリンセス・プリンシパル劇場版を、私は今週末も見に行こうと思います。

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