カタ、とシンクに置いていた平皿が、何かのきっかけで小さく鳴った。はっとして毛布から飛び出して、その一瞬で、私は夏になる。寝惚けた耳に優しく零れる油が弾ける音と、焼けたトーストの香り。夢みたいに消えたのに、現実みたいに覚えてる。薄暗い冷え切った台所に、まだ貴方がいるような気がして。

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