浦上博子 弓道範士九段
型で自由になる弓と心
「部分部分をきっちり型にはまるように体で覚えて、
体がやってくれるように普段の練習をしないといけない」
中たりのみを追い、型をはずれる我流を戒め、型を守った正しい射で培われる心を社会で活かしてほしいと語る、浦上博子弓道範士九段。
武道の目的は何か。
七十余年の経験を振り返りながら、じっくりと、語ってくださいました。
(取材 2006年6月23日 浦上道場にて)
※所属や肩書きは、季刊『道』150号に掲載当時のものです。
<本インタビューを収録『武の道 武の心』>
平成6年3月 静岡県新居町道場にて 範士研修会
写真提供:浦上範士
「弓は理屈で引くものでないからだで引くものだ」
―― 今の武道の技術書は、言葉で説明するものが多いですが、先生はご著書『型の完成にむかって』に「古くからの言い伝えや伝書には技術的なことはあまり細かい点までは具体的に言われておりません。書き残すことは、書いた方の意志と読む方の受け取り方がくいちがう場合があるからでしょう」と書かれておられますね。
なかなか武道のことは言葉で言い表わすのがむずかしいものでね。昔の本は、ほんの少ししか書かなかったものですが、今の本はこと細かに書いてあり、なかにはおかしいなと思うところもあったりするんです。昔のように、自分に学ぶ力がないと学べない、力がないと学び取れないというほうが、かえっていいかもしれません。
浦上の父(浦上栄範士)は「弓は理屈で引くものでない、からだで引くものだ」と言いましたが、他のことがらについても言えることだと思いますね。
―― 浦上栄範士はどのような弓を引かれたのですか。
喜寿の時のお祝いの射を16ミリから8ミリにしてそれをビデオにしたのが残っていますが、それを見るとほんとに素晴らしいと思います。とっても真似なんかできない。たんたんと引いているのですが、すごく正確なんです。年をとってからは、手をあまり上げられなくなってきて、弱い弓に変えたのですが、弱い弓を引いても、強い弓を引いてもぜんぜん変わりませんでした。
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