怒る男

初稿 2023年6月21日
著者 douki

 現在、日本における性教育の現場は、悲しいことに差別とセクハラが罷り通っている。教壇に立つのは、エプロン姿のおばさんばかり。授業では、そんなオバサマたちが男子の前で、柔軟剤の匂いのする人差し指を男性器に見立て、得意げに男性用避妊具を付けるジェスチャーをしたり、鼻息荒く、男子生徒に顔を寄せ、性行為をしたいと思ったことはあるか、と聞いたりしている。ひどいセクハラである。私は、辱めを受けた彼らの気持ちが分かる。死よりも辛い辱めである。このように、彼らは、日々、教室で、男心を理解できない女性たちに傷つけられている。彼らは、夜毎、枕を濡らすだろう。私も泣こう。鍋いっぱい泣こう。すると、私のはらわたは、涙を出汁にして、たちまち、グツグツと煮え繰り返ってくる。

 私は怒っている。まず、欧米先進諸国では、断じて、このような昭和の遺物のような授業が行われることはない。なぜなら、私が、欧米先進諸国においてこのような蛮行があると、聞いたことがないからである。また、地球上で、今、こんな授業が行われているのは日本の他に存在しないことは明らかである。なぜなら、そうでないはずがないからである。許せない。人権侵害である。条約違反である。百万円の慰謝料を請求する。強制猥褻で逮捕せよ。私には、全ての日本人男性の代表として、この事実を国連に報告する義務がある。なぜなら、私には、彼らを、このような危険から守るという尊い義務があり、これにより、地位、注目、金銭、税法上の利益を得ているからだ。

 ああ、なんて、日本は遅れた国なのか。人権後進国日本。私は、日本人であることが恥ずかしい。ジェンダー・イコーリティや性的平等という言葉が騒音公害と呼ばれるほど声高に叫ばれる現代において、我が国には、いまだに、性教育は女性が行うべきもの、という偏見がある。
 この偏見の根底には、恋愛において、男性は、女性の奴隷であるべきだ、という、おぞましい考えが横たわっている。この身の毛立つ考えの教祖は誰だろうか。私は告発する。それは、性産業、つまり、女性中心の閉鎖的な世界で、男性の性を、少女漫画や恋愛映画などという臓物色した箱に梱包して売り歩いている人々に他ならない。
 まず、この連中の主な顧客は、恋愛において、現実の男性たちから相手にされない哀れな女性たちである。彼女たちは、現実で求めても手に入らない愛を、これらの業界が提供する仮想世界の中で手に入れる。しかし実のところ、彼女たちに買われ、トイレットペーパーのように消費される夢の世界の男性たちは、彼女たちの多種多様な欲求に応えるために品種改良されたバター犬であり、女性の喜びのため、それだけのために存在している性奴隷である。そう、この奴隷という性質こそ、彼女たちの求める、恋愛における男性の役割なのだ。
 もっとも、夢はいつか醒めるものであり、彼女たちを慰めていた王子たちも、十二時の鐘が鳴ればただの五本の指に戻るはずだった。ところが、多くの女性たちが、目覚めぬ夢遊病者となり、現実の男性にも、夢の中の非実在的男性と同じ男らしさを求め、それが叶わないと歯ぎしりをするようになってしまった。恋愛は、どんな時でも、求めるがまま。それが、彼女たちが経験から得た常識だった。
 とは言え、現実の男性たちが、彼女たちの身勝手な求めに応じる訳がない。彼女たちは絶望する。そして、間もなく、彼女たちは、その口を、不満を嚙み潰すためよりも、男性たちを攻撃するために使うようになった。しかし、駄々をこねて得をするのは、何かを持っている者だけだ。結局、男性たちは、彼女たちを街へ降りてきた猿のように避けるようになった。それからしばらく経ったある日。人里離れた山、歯ぎしりと憎悪の言葉のやまびこの中、彼女たちの母性本能が囁く。閃いた。雷鳴に子供を攫う山姥が現れる。その瞳が捉えたのが、子どもたちであり、学校教育だったのである。性教育を恋愛マナー講座に仕立て上げ、本当の恋愛が始まる前に、男性は女性に尽くすものだと教え込むのだ。
 この企みを実現させるためには、彼女たち自身が教壇に立つ必要がある。これより、性教育は、女性が行うべきもの、という結論に辿り着く。以上が、神聖なる教育の場に悪魔的考えが潜り込んだ経緯である。
 彼女たちは、この告発をデマだと言うだろう。しかし、それこそが、この告発が疑う余地のない真実であることを裏付けている。なぜなら、上記の主張を否定する者は、すなわち、差別主義者であり、差別主義者は噓つきであるから、噓つきが偽りだと言ったことは、すなわち真実となるからである。

 さあ、石を投げる相手は決まった。今こそ、彼女たち差別主義者を打倒するときだ。前時代的な女性たちをオミットし、男性的な新しいマインドを取り入れ、サステイナブルな未来のために、グローバル社会のメンバーとして、この差別と搾取に満ちた教育現場をアップデートしよう。老木を抜いて、楽園を作るのだ。
 見よ。世界は、民主主義を超え、多様性社会へと進化しようとしている。私たちも続こう。これは、第二の文明開化である。出遅れるな。私たちの未来を作るのは、AIでもITでもない。DNAも必要ない。LGBTQIA (*1)である。多様な男性が輝ける社会はすぐそこだ。世界が、私たちの成長を見守っている。
 Men's Life Matter! Men's Life Matter! 太陽光発電バンザイ!
 おい、そこのセクハラ差別女、百万払うのが嫌なら、さっさと教壇から降りるんだな!

(*1 Lonely men, Genius men, Beautiful men, Tender-hearted men, Qualified men, Impartial men, And the other men)
(おわり)

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