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「羅小黒戦記」という可愛いネコチャンが急にヤバい能力バトルを始める映画の話

※この記事には途中から映画「羅小黒戦記」のネタバレが含まれます。


「羅小黒戦記」(ロシャオヘイセンキ)という映画がありまして、

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ンがわ゛い゛い゛

今年の秋ごろからミニシアター系映画館を中心に上映されているのですが、公開直後より非常に高い評価を得ており、それを受けてか徐々に拡大公開されつつある話題作となっています。
私も先日ユジク阿佐ヶ谷にて鑑賞してまいりました。
(ちなみにこの写真はユジク阿佐ヶ谷の入口で撮影したものですが、阿佐ヶ谷駅周辺を歩くとわりと至る所にポスターが掲出されていました。)

さてポスターの印象では一見黒猫ちゃんの可愛らしい映画に見えます。
事実キャラクターがとっても可愛い作品でもあったのですが、どちらかというとNARUTOばりの能力バトルアクションが強烈に印象に残る映画でいやぁとっても楽しかったです。

予告編はこちら。

人間と妖精が存在する世界で、人間によって住処を追われた妖怪・羅小黒(ロシャオヘイ。通称シャオヘイ)と、同じく妖精のフーシー、そして謎の人間・ムゲンの3人が中心となり、小黒の「居場所」を探していく、といった内容のアニメ映画。
2D作画でここまでやるか…!と言わんばかりのカメラグリングリンのアクションと、個性的かつ萌え要素の塊みたいな人しか出てこないと言ってもいいほどに魅力あるキャラクター達、そして後でネタバレ全開で書きますが非常に深くて前向きなメッセージが込められた超エンタメ作品となっています。

またこの映画以前に同じ監督によるwebアニメもかなりの数作られているのですが、その時点ですでに相当頭がおかしい動きをしているのでこちらも要チェック。

これは度肝を抜かれた第四話
(最近日本語字幕が設定できるようになりました。ありがたい。)


※以下からネタバレ全開です。







「共存」の難しさ

羅小黒戦記を観て感じたのは、この映画は「居場所を探す」というストーリーの中に「自分とは違う人達と共存することの難しさを語りつつ、なお希望を描いている」ということでした。

この作品は「人間」と「妖精」の対立、もしくは偏見を描いたシーンが数多く存在します。
例えばフーシーの目的は「人間からかつての故郷を取り戻し妖精の楽園を作ること」、そして主人公の小黒もまた「故郷を奪った人間を憎んでいる」キャラクターでした。
またそんな小黒が地下鉄の戦闘から人間を守るシーンでは、一時的に化猫の姿になった小黒を見た人間達が「化け物だ」「私たち食べられたりしないよね…?」といったようなセリフを吐きます。(唯一小黒が守った小さな女の子だけは、小黒の行動をしっかり捉えて「ありがとう」と言ってあげます。)

また同時に、同じ妖精同士の対立も描かれています。
人間との共存のために秩序を守る「館」サイドと、先述したフーシーサイドの対立がそれです。
同じ種族同士(厳密にはムゲンだけ人間ですが)であっても、信条の違いで対立してしまうこともある。そのもどかしさもハッキリと感じ取れます。

そんな偏見や軋轢が幾度となく提示され、事件は一段落したもののなんと実力者たるムゲンさえも館の一部の層から煙たがられている事が判明したラスト。
そこで小黒が出した答えは「一緒にいたいから」ムゲンと共に旅をする、というものでした。要するに小黒にとっての居場所はムゲンその人だったわけですね。

すべての人が分かりあえるなんて事は無い、生い立ちが近くても一緒になれるとは限らない、
だけどそんな社会の中でも「一緒にいたい」と思えるほど信頼できる存在がいることの安心感たるや非常に素晴らしいもの。
「羅小黒戦記」はそんな温かいメッセージを持っているな、と感じた次第でした。