見出し画像

下世話ばなしは犬も食わない


昨年、四人目である末っ子を産んだ私はこの頃、色んな人と顔を合わせるとよく「5人目は?」と聞かれることがある。それは近所のおばさんだったり、そう親しくないママ友だったりと、ありとあらゆる人にそう言われることが多くなった。ついでに言うと、三人目を産んだあとは「4人目は?」とよく聞かれた。その言葉を聞くたびに、私は体の奥底から不快な気持ちが押し寄せてくるのだ。率直に言うと、「気持ち悪い」。その一言に尽きる。

結婚をすれば「子供は?」、一人目を産めば「2人目は?」、女の子が産まれたら「次は男の子だね!」と私だけでなく全国各地でこのような言葉を掛けられて嫌な思いや疲弊している人をSNSでよく見かけるようになった。

批判も承知であえて書くけど、子供を授かるためにはセックスをしなければならない。だから「子供を産め」、というのは間接的に「セックスしろ」と言っているのと同じことであるように私は思う。私にはそう聞こえてしまうのだ。まったくなに言ってるんだコイツ、と返されそうだが、それはこっちのセリフである。私が「5人目は?」と聞かれて、心底気持ち悪くなる主な原因はこれにある。そして私はまだギリギリ20代なので、「若いから5人目もいけるよ」ともよく言われるのだけど、なんだろう、若い子はみんな性欲が強いとでも言いたいのだろうか。性欲の強さは人それぞれだし、私は産後一年経った今でもまったくそんな気持ちにはなれない。そんなことする暇があるのなら読書や映画鑑賞、ゲームをしたいし、なにより寝たい。私はどの子も望んで産んだし、子供の数と性欲を繋げる安直な考えは持ち合わせていないので、たとえ冗談でもそういった考えの人とはこの先も分かり合えない。仮にも5人目を産んだところでその人は出産や育児に対する金銭の補助をしてくれるわけでもないし、面倒を見てくれるわけでもない。そうやって楽しそうに他人に向かって口を出す人はいつだって、何の責任も持たない私たちの生活とはまったく関係の無い人たちばかりだ。

こういった話題を振られるたびにニヤニヤとした視線を投げられて、何度も言うが気持ち悪くなるのと同時に、言葉は悪いが「この人、大丈夫かな?」とも思う。いかにも"そういったことを考えている"という表情と声色と言葉に、反吐が出る。私をそういった目で見たいのだろうけど、あなたが私をいかがわしい目で見るように、私もあなたを同じように見ていることに早く気づいて欲しい。ただ単に下ネタを投げかけられるぐらいなら軽く流せるが(嫌だけど)、家庭事情に口を出されているわけだから下ネタよりもタチが悪い。世間話だとしても他にも話題はあるだろうに、会うたびにこの話題を振られるので心底、嫌になる。欲に飢えているのはあなたなんじゃないですか?


私のそんな愚痴は置いといて、まず、誰もがみな子供を授かれるわけではない。私は有難いことに子宝に恵まれたが、身内には何度も悲しい思いをしてやっと子供に恵まれた人もいるし、一人目は産まれても二人目不妊で悩んでいる人もいる。今現在、不妊治療を頑張っている人もいれば、そうじゃない人もいるし、そもそも子供を望まない人だってたくさんいるだろう。そういった事情も知らずに「子供は?」、「2人目は?」という言葉を掛けることはその人たちの心をするどい刃で傷付けていることになる。もちろん、事情を知らないのは当たり前だ。わざわざ自分から家庭事情を赤裸々に話す人は少ないだろうし、関係の薄い人にだったらなおさらだ。でも「知らなかった」では済まされないから、想像することが大切なんだと思う。その人にはその人の家庭事情があることを理解すること。そもそも、冗談でも人の家庭事情に首を突っ込んだりすること自体が無礼であることがもっと世の中に広まってほしい。これは相手にもよるだろうけど、家庭の事情を話したい人もいれば、私のように聞いて欲しくない、話したくない人だっている。ママ友だけに限らず、どれだけ親しくても踏み込んではいけないテリトリーは誰にでもあるし、これは家庭事情だけに留まらずその人の生き方に対することでもあるから本当に他人は黙っておいた方がいい。デリカシーの無さで人を無遠慮に殴らないでくれ、頼むから。


ところで、「下世話」というと性や排泄のことだと思っていたのだけれど、どうやらそれは誤用だということをこのnoteを書くにあたって初めて知った。「下世話」とは、「世間で人々がよく口にする言葉や話」という意味らしい。思っていた意味とは違っても、他人から家庭事情に首を突っ込まれることはまさに世間ではよくある話なのでまったく違うということでもないだろう。

こんなデリカシーの無い程度の低い世間話は犬も食べないだろうな。っていうか、こんな不味いもの食べさせたらかわいそうだよね。人間は「美味しい!美味しい!」って食べてる人、よく見かけるけど。








よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはライターとしての勉強代や本の購入に使わせていただきます。